MicrosoftとVMwareの間に何があった?
先週、連休の狭間にこんな記事がPublickeyに載りました。
マイクロソフト、ついにAzureにVMwareを乗せる。「VMware virtualization on Azure」発表。VMware Cloud on AWSなどに対抗か
記事中にもありますが、これまでVMwareはAWSを初めとする大手クラウドベンダーとの戦略的提携によってオンプレミスの顧客の移行先としてクラウド上にVMware環境を構築してきました。しかし、Microsoftとは提携していなかったのです。上記記事では、MicrosoftのHyperVがVMwareと競合しているのが原因ではないかと見ています。とはいえ、VMwareも、クラウドで存在感を増すAzureを無視し続けるわけにも行かなかったのでしょう。
--と思っていたら、昨日になって驚きの記事。
「VMware virtualization on Azure」に、VMwareは関わっていないしサポートもしていないと。VMwareがマイクロソフトを牽制
Microsoftの発表を提供元が真っ向から否定してしまったのです。これ、どういうことなんでしょうか? 普通ではちょっと考えられません。上記記事にはその背景についての考察もされています。簡単にまとめると、VMwareは今回のMicrosoftの発表が気に入らない、その理由は:
- ハイブリッドクラウドにおいてMicrosoftとVMwareは競合している
- 今回の発表に含まれているVMware virtualization on Azureは、最終的に一部のワークロードをVMwareからAzureへ移行させるためのサービスである
これらの見立てには私も同意ですが、私の疑問は、何故片方の発表をもう片方が否定するような事態になってしまったのか、ということです。会社同士のマナーとしてはかなり異例と言えるでしょう。単なる行き違いなのか、何らかの意図があるのか?
交渉決裂なのか、単なる行き違いなのか?
そもそもMicrosoftといえども、開発元が動作保証しないと言っているソフトをサービスとして提供できる訳がありません。(今回はプレビューですが)普通に考えて、VMwareと動作検証とか業務提携とかの話はしていたはずです。それが決裂したのか、行き違いがあったのか。交渉が決裂した話を発表してしまえば、下手すれば訴訟になるでしょうから、やはり行き違いという可能性は高いと思います。直前にどちらか(VMwareではないでしょうか)が態度を翻して、社内での情報共有がうまくできておらず、発表してしまった、と言うことなのでしょうか。しかし、先週の記事にはこう書かれています。
私たちはこれを、プレミアVMware認証パートナーとのパートナーシップにより提供します。
確かに「VMwareと」とは言っていないですね ^^; しかし、そう書くと言うことは、VMware本体の名前を出すことはできないことがこの時点でわかっていた、ということでしょう。Microsoft内の情報共有はできていたのでしょう。しかし、そんな状態でどうして発表してしまったんでしょうか。プレミアであろうが、どれだけ偉いパートナーが関与していても、開発元がサポートしないと言ってしまえば、そんなサービスを買う人はいないでしょう。
真相は今の時点ではわかりませんが、何らかの交渉はあったとしても、最後の段階でMicrosoftはVMwareに無断で(少なくとも承認を得ずに)発表してしまった、ということのように見えますねえ。VMwareはMicrosoftにクレームを入れたでしょうが、そこで話がつかずに、それを否定するコメントを発表した、とか。--いずれにせよ、かなり異例なことではあります。
握手しながら殴り合うのが欧米のビジネスだが・・
現代ではこれだけの企業同士の関係は多岐にわたり、ひとつのエリアで競合していても、他のエリアでは協力するというのが普通です。片手で握手しながらもう一方の手で殴り合う、というやつですね。日本人から見ると若干違和感がありますが、欧米では普通のようです。現にVMwareとMicrosoftは今年5月に提携を発表しています。
ですから、別に仲が悪い、というわけでも無いんですよね。
ひょっとして意図的とか
ここからは、かなりな陰謀論になりますが、この、表面上は異例に見えるやりとりも、意図的にやっているのかもしれないなあ、とも思います。だって、ガチの行き違いとしたら、あまりにお粗末だからです。
例えば、Microsoftの発表直前にVMwareの戦略的パートナーであるAmazonからクレームが入り、VMwareとしては身動きがとれずに、発表だけしてしまってから、あれは実は私は知りません、というAmazon向けの態度をとったとか。(もちろんMicrosoftにも裏で謝っている)これは考えすぎですかねえ。
まあ、ここまで騒ぎになると、お互いに収め方が難しくなり、裏で何らかの手打ちがされて、「あれはちょっとした勘違いだ」的な終わり方をするのかも知れません。