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AR版ゲリラマーケティングの可能性

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残念ながら日本代表はベスト8には進めませんでしたが、いよいよ決勝戦に向けて盛り上がりをみせるサッカーW杯。先日、そのW杯を舞台としたある事件が起きていたのをご存知でしょうか:

オランダ:W杯でビール宣伝、女性2人逮捕 (Global Voices)

オランダのビール会社ババリアで働くオランダ人女性2人が、 6月14日に南アフリカで行われたオランダ対デンマークの試合中に、ワールドカップの公式スポンサーではないビールを宣伝したとして逮捕された。女性たちは同社が販売するギフトパックの一部である、いわゆる「オランダ・ドレス」を着た30人ほどのモデル集団のメンバーだった(ババリア社の flickrページに写真が多数掲載されている)。

関連する動画も多数アップされています:

ということで、W杯だけでなく大きなイベントには「公式スポンサー」という存在がいて、そのイベントに関連した宣伝行為を独占することができるわけですが、当然ながらフリーライダーが現れる可能性は常にあるわけですね。で、今回のババリア社の行為も「公式スポンサーでないのに宣伝した!」と見なされ、参加した女性達が逮捕されるまでに至ってしまったと。ゲリラマーケティングに挑む方も、なかなか大変です。

で、この行為が許されるか否か?を議論するのも面白いのですが、それより今回注目したいのはこちらの動き:

Ambush marketing in the virtual space (Augmented Planet)

Shortly after the incident a Layar developer created a layer placing an orange dress girl back at the stadium, however I’m unable to find the layer so can only assume that Fifa’s mighty reach stretched as far as Amsterdam and the layer has since been removed.

この事件の直後、Layar(※モバイルARブラウザの一種)のコンテンツ開発者の一人が、スタジアムにオレンジ色のドレスを着た女性を出現させるレイヤー(※Layar上で表示されるコンテンツの呼称)を開発した。しかし私は見つけることができなかったので、FIFAがその強力な力をアムステルダムにまで及して、削除させてしまったのかもしれない。

ということで、AR(拡張現実)を使い、現実には逮捕されてしまった女性達をバーチャルに出現させようという動きがあったと。残念ながら真偽は不明ですが、技術的には何の問題もありませんし、そんなことが行われていたとしてもおかしくありません。コスト的にも現実に女性達を配置するよりずっと安上がりですから、こうした「ARゲリラマーケティング」を行おうという動きは、今後増えてくるのではないでしょうか。

もちろんこのコンテンツを見てもらうには、アプリを起動して「コンテンツを見る」という操作を能動的に行わなければなりません。その意味ではまだまだゲリラマーケティングにはなり得ないのですが、例えばこうしたアプリに組み合わせるというのはどうでしょうか:

junaio: junaio displays Public Viewing and Match Statistics with Augmented Reality (TradingMarkets.com)

Layarと同じモバイルARブラウザである「ジュナイオ」が開発した、サッカー関連コンテンツについて。以下はイメージ画像ですが、こんな風に、ちょうどテレビ中継を見ているような関連データ(スコアやシュート数、支配率など)表示が行われるわけですね:

WorldCup_Vodafone

例えばこのアプリに「オレンジ色のドレスを着た女性達を表示させる」という機能が追加されていたらどうでしょうか、いや、より直接的に、「このアプリは~社の提供でお送りしています」などといったメッセージを常時表示していても構いません。仮にこんなアプリを使いながらスタジアムで観戦するスタイルが定着したら、ARゲリラマーケティングはよりやりやすくなるでしょう。その時、FIFAや公的機関は?「スタジアムにおけるAR表示を禁止する」というような規制をかけてくるのでしょうか。

さらにARを使ったゲリラマーケティングは、こんな可能性も示しています:

Augmented Reality: BP logo hack (Beyond The Beyond)

“the leak in your home town”というiPhone用のARアプリについて。このアプリ、個人が作成したものなのですが、とりあえず映像を見ていただいた方が早いかもしれません:

お分かりいただけたでしょうか?実はこのアプリ、BP社のロゴマークにカメラを向けると、ロゴから石油が流出しているようなイメージが表示されるというもの。これはBP社にとっては厳しいアプリですね。

bp_station1

こちらも当然ながら、「アプリを起動してカメラを向ける」という能動的な操作が必要になるわけですが、例えばセカイカメラのようにユーザーがARコンテンツを配置できるプラットフォームだったらどうでしょうか。街中にあるガソリンスタンドの上に「流出事故を起こした犯人!」などのようなエアタグが貼られる、という可能性が考えられるでしょう。その時、やはりBP社や公的機関は「ARコンテンツの設置を止めさせる」という行動に出るのでしょうか?

まだまだAR自体が社会的認知度の低い存在ですから、ARマーケティング/ゲリラマーケティングが定着するのにもしばらく時間がかかるでしょう。しかし、かつてソーシャルメディアが拡大してきた過程の中で「掲示板やSNSの上では大きな批判をされているのに、当事者である企業がその存在に気づかない/軽視する」というような事態があったように(まだそんな企業も多いかもしれませんが)、ARという世界に気づいているか否かが企業の行動の差となって現れるということも起きるかもしれません。いずれにせよ、企業にとっては「消費者の目はどの世界に向いているのか」を把握することがますます難しくなる、という状況になるのかもしれませんね。

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