ローカルニュース市場、まだまだ新聞紙に軍配?
ウェブがニュースメディアの主力としての地位を固めていくのに従い、「残された市場」として新聞紙・ネットの双方から狙われているのがローカルニュースという領域。そのローカルニュースを対象にした調査で、現時点ではまだ「新聞の方が新しい情報が見つかる」という結果が米国で発表されたそうです:
■ Study Finds That Papers Lead in Providing New Information (New York Times)
Pew Research Senter が実施している"Project for Excellence in Journalism"というプロジェクトが発表した調査結果について。米ボルティモアで昨年7月に行われたものだそうですが、それによると、調査期間内に話題になった6つの事件を扱った記事のうち、83%が既知の情報を繰り返すだけで新しい情報を伝えていなかったとのこと。それはまぁ、日本のメディアでもよくある話ですが、問題は
Despite diminished resources of established news organizations, “of the stories that did contain new information, nearly all, 95 percent, came from old media — most of them newspapers,” it said. “These stories then tended to set the narrative agenda for most other media outlets.”
既存の報道機関は様々な資源の低下という事態に直面しているにも関わらず、「彼らの伝える話には新しい情報が含まれており、95%の情報は旧式メディア(ほとんどが新聞)からもたらされたものだった」そうである。さらに、「こうして伝えられる話は、他の多くのメディア上における話の中身を規定する傾向があった。」
という部分。まだ新聞というメディアの仕組み、影響力が強く残されていることが伺えます。ただし New York Times の記事の後半でも指摘されていますが、この調査はボルティモアというエリアを限定して行われたものであり、他のエリアを見てみれば違う結果が出る可能性もあるでしょう。
むしろ問題は、こちらの箇所かもしれません:
Even the reporting done by traditional media was driven mostly by government statements rather than journalists’ own digging, the study found.
従来型のメディアによって行われた報道であっても、ジャーナリストが彼ら自身の力で深掘りするのではなく、政府からの発表に強く影響されてしまう傾向があることを調査は明らかにしている。
ということで、新しい情報が掲載されているといっても、それは地道な労力で紡ぎ出されたものではなく、「お上」の発表を右から左に伝えているだけのものばかりの可能性があるというわけですね。様々な経営資源の削減に直面した従来型メディアが、調査能力を犠牲にして「報道」を続け、新しいメディアはそれをコピペして流すだけ――意地悪な言い方をすれば、そんな状況が生まれてしまっているのかもしれません。
従ってこの調査結果は、誰が勝ち・負けという話ではなく、ローカルニュース市場の1つの危機として捉えるべきでしょう。いや、そこにニーズがあれば、誰かが新たな仕組みを打ち立ててサービスを提供するようになるはず……個人的にはそんな楽観論を抱いていたいところですが、果たしてこの傾向、日本でも再現される(あるいは既にされている)のでしょうか。
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