ソーシャルブックマークは衰退する?
del.icio.us がリニューアルし、delicious.comとなって再オープンしました。変更点は公式ブログに詳しいのでそちらを読んでいただくとして(ITmedia での紹介記事はこちら)、ちょっと面白い反応が出ていることをご紹介しましょう:
■ Delicious 2.0: Who bookmarks any more? (mathewingram.com/work)
Mathew Ingram 氏によるコメント。彼は10,000件以上のページをブクマしているほど Delicious を使い倒しているそうなのですが、最近は「ブックマークしてもそれを見返すことはない」「何かを書こうと思ったら Google で調べる」など、逆にソーシャルブックマーク的な機能を持つサービスに魅力を感じなくなっているとのこと。そして、
Perhaps the Delicious redesign will appeal to enough people who aren’t like me — to new adopters who are still using their Netscape or IE bookmarks, or to people using Diigo or Clipmarks or one of the dozens of other bookmarking tools (all of which I have also tried). But I think I’m even less likely to use Delicious than I was before.
恐らく Delicious のデザイン変更は、僕のような人間以外には十分アピールするものなのだろう。ネットスケープやIEのブックマーク機能、Diigo や Clipmarks などのブックマークツールを未だに使っているような人々に(こいったツールは僕も使ったことがあるけれど)。けど僕は、以前ほど Delicious を使わなくなるような気がする。
と、リニューアルされても以前ほど興味を引かれないと述べています。これは彼だけの意見かもしれませんが、果たして Delicious は del.icio.us でヘビーユーザーだったアーリーアダプターな人々を、今後も惹きつけ続けることができるのでしょうか。
人が「ソーシャルに」ブックマークしたくなる理由として、どんなものが考えられるでしょうか。以前 Polar Bear Blog でもまとめたことがあるのですが、個人的には以下の5つが挙げられるのではないかと考えます:
- 将来再利用したいコンテンツを記録・分類するため
- あるグループにとって有益なコンテンツを共有するため
- 自分が有益だと感じたコンテンツを他人と共有するため
- あるコンテンツに対する評価を行うため
- あるコンテンツに対する意見を述べるため
仮にこの分類に従うとして(もちろんこの分類しかあり得ないとは思っていませんが)、Mathew さんが「ブクマしなくて Google で十分」と感じているのは1.や2.の使い方に対してでしょう。確かに検索エンジンなど「コンテンツを発見するツール」が進化すれば、一度見つけたコンテンツを保存しておいたり、他人のコンテンツ発見能力に頼るツールの必要性は少なくなります。Delicious のリニューアルがいくら優れたものだったとしても、ソーシャルブックマークというサービス自体の存在意義が無くなってしまうかもしれないわけですね。
しかし3.から5.までの使い方、つまり元のコンテンツに新たな価値を追加する使い方が進化していけば、ソーシャルブックマークを検索エンジンが代替することは不可能になります。日本で「はてなブックマーク」等のサービスを使われている方々にとっては、この価値の重要性を理解することは容易いでしょう。今回の Delicious のリニューアルでも、個々のURL毎にメモが追加できる"Notes"という機能が導入されていますし、今後はソーシャルブックマーク自体がメディアとしての価値を生むような方向に進化していくのではないでしょうか(これから"Delicious Star"が導入されるかどうかは分かりませんが……)。
ということで、単にコンテンツがネット上でブックマークできるという意味での「ソーシャルブックマーク」は衰退していくものの、現在とは全く違う形に進化/特化していく可能性が強いのではないか、と思います。いずれにせよ、Delicious のリニューアルが今後どのような反響を呼ぶか注目ですね。