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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

「テストを始めますので、本やパソコン、携帯電話を……」

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「テストを始めますので、机の上を片付けて下さい」というのが普通の指示。しかしこれからは、「机の上に本、PC、携帯電話、MP3プレーヤーを出して下さい」というのが当たり前になるかもしれません:

School takes modern approach to student exams (ABC News)

オーストラリアにある Presbyterian Ladies Collegeという女子校で、あらゆるものを持ち込み可能にした、新しい試験のスタイルが試されているというニュース。ちなみに携帯電話(通話)やメール、SNSなどを通じて、外部の人々とコミュニケーションすることまで許可されているのだそうです。そんなんでテストになるの?と不安になりますが、テストを受けた生徒たち自身は、「これらのテクノロジーが使えてもテストが簡単になるわけではなかった」と述べているとのこと。そしてある生徒は、こうコメントしています:

Student Annie Ashie used the internet and her mobile, but she says the use of technology in exams presents its own difficulties, especially when it comes to time management.

"I found it really difficult to prepare because I had so many choices in front of me - calling on the internet or using my laptop, or just writing on pen and paper," she said.

生徒の一人、Annie Ashie は、ネットと携帯電話を使ったが、テクノロジーを使うことで別の問題が起きたと述べている。それは特に、タイムマネジメントに関したものだったそうだ。

「ネットやPCを使うか、それとも単にペンと紙を使うか。数多くの選択肢が目の前にあり、準備が非常に難しいと感じました。」

とのこと。日本でも最近、「Google で答えを検索してしまう生徒がいる」ことが問題視され、その1つの回答として「答えがググれない問題を出せば良いのでは」という意見が出たりしています。狙ってかどうかは分かりませんが、このオーストラリアの例では「タイムマネジメントのスキルを試す」という効果も出ているわけで、ネット等を使わせることの教育効果を極限まで追求した形と言えるでしょうか。

ちなみにこれまでこの形式で、「ソネット(14行詩)を書きなさい」といったテストが実施されたそうです(制限時間は40分間)。知り合いに詩人か英文学者でもいれば別ですが、確かにこういった問題であれば、ネットがあるだけでは答えを出すことは難しそう。実際、ネット等のテクノロジーを活用した生徒と、従来通りの手法で問題を解いた生徒との間に、点数の差は生じなかったそうです(それはそれで、テクノロジーを活用するスキルが身についていないという問題になりそうですが……)。

個人的には、純粋に記憶力を試すというテストが必要・有効な分野もあると思います。しかしこういった、実生活で問題を解くのに近い形のテストが有益な分野もあるでしょう。当然の話ですが、どちらのメソッドが優れているかという話ではなく、どの分野でどの形式のテストを採用すべきか、という方向に議論が向かっていうことを期待します。

……余談ですが、今朝はこんな記事もありました。ニューヨーク・タイムズのレポートですが、アメリカの大学で、生徒に iPod を配布して情報共有に役立てているという話:

Welcome, Freshmen. Have an iPod.  (New York Times)

テキサスのある大学では、生徒用に600台の iPhone と300台の iPod を購入したのだとか……羨ましい、いや、「今日がレポートの提出日だなんて知りませんでした!」という言い訳がきかなくなって困るのか?

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