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Borders が Amazon とは別方向に進化している件

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オンライン書店と言えば、Amazon.com が究極の姿として頭に浮かびます。もうそれ以外の可能性など想像できない――と安易に考えていたのですが、米国の大手書籍小売業者 Borders が、ECサイトを独自の方向に進化させつつあります。きっかけはこちらの記事:

書籍小売大手 Borders、Amazon.com との提携を解消し独自路線へ (japan.internet.com)

これまで Borders は Amazon と提携してオンラインショッピングサイトを開設していたのですが、先月末にその提携を解消、独自サイトを立ち上げたというニュース。新サイト(ちなみにベータ版とのこと)の特徴については、以下の記事に詳しいです:

Borders launches beta version of new site (Retail Week)

いくつか特徴を箇条書きにしてみると:

  • バーチャルな本棚を再現し、表紙イメージで商品が選べる"Magic Shelf"(以下はそのスクリーンショット)
    borders_magic_shelf
  • 様々な作家やアーティストのインタビュー、パフォーマンスを動画/音声で楽しめる"BordersMedia"
  • テキストだけでなく、動画や画像によるコメントを投稿し、他のユーザーと交流できる"Borders Book Club"

等々。その他、検索機能やレコメンデーション機能も改善されているそうですが、他社と異なる点としては上記の3つだと思います。

中でも注目は、"BordersMedia"と"Borders Book Club"でしょう。BordersMedia はその名の通り、Borders にメディアとしての価値を付与するもの。ECサイトのコンテンツは「商品」が中心なわけですが、それに「作家へのインタビュー」「アーティストのパフォーマンス」などのコンテンツが加わるわけです。そして Borders Book Club は、言うなればSNS的な価値を付与するもの。ユーザー自身が、Borders のサイトに魅力的なコンテンツを追加していくことになります。

もちろん Amazon.com (Amazon.co.jp ではなく)も、「作家ブログの掲載」「掲示板機能の追加」などといった形で、商品以外のコンテンツの拡大を図っています。しかし Amazon がそういった追加コンテンツをあくまでも二次的な位置付けにしているのに対し、Borders の新サイトでは全面に押し出しているというイメージ。これは完全な想像ですが、これまでの歴史の中で築いてきた作家達との関係と、実店舗運営の経験から得られたお客様とのコミュニケーション術を活かそうとしているのかもしれません。

どちらの方向性が成功を収めるのか、また両者が今後どのような変化を遂げるのかは分かりませんが、こういった競争の中から新しい発想が生まれてくるのは歓迎したいところ。Borders の新サイト、興味のある方はチェックしてみて下さい。

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