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10年間、泥のように働いて欲しいなら

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遅ればせながら。IT系のネット界隈(?)で話題となっている、例の一言についてコメントを:

「10年は泥のように働け」「無理です」――今年も学生と経営者が討論 (@IT)

西垣氏は伊藤忠商事の取締役会長丹羽宇一郎氏の「入社して最初の10年は泥のように働いてもらい、次の10年は徹底的に勉強してもらう」という言葉を引用し、「仕事をするときには時間軸を考えてほしい。プログラマからエンジニア、プロジェクトマネージャになっていく中で、仕事というのは少しずつ見えてくるものだ」と説明。これを受けて、田口氏が学生に「10年は泥のように働けます、という人は」と挙手を求めたところ、手を挙げた学生は1人もいなかった。

タイトルにもなっているこの一言。当然ながら、激しい反論を巻き起こしています。

個人的には、時には「常識的な範囲内で」身を粉にして働くのも良いかと思います。朝から晩まで、それこそ深夜まで仕事に打ち込む経験なんて、家族ができたらできないことですからね。しかし条件が1つだけあります。どうか、「ここで努力したらこうなれるかもしれない」というロールモデルを示して下さい。

別に仕事を手取り足取り教えてくれ、という意味ではありません。いくら社会経験がないからといって、そこまで受け身な学生は少数派でしょう。そうではなく、「頑張った結果、こんな素晴らしいもの手にしている人がいる」という姿を見せて欲しいのです。いや、何かを手にしていなくても「この方向に進めばこんな良いことがある」という理想でも良いでしょう。記事中で「自らポジティブなビジョンを提示する人の方がいい」と発言した学生さんがいたことが紹介されていますが、僕もそれに同感です。

いまやネットがビジョンを与えてくれる存在となりました。ウェブサイトを開けば、アルファギークと称されて賞賛を浴びる人、ベンチャーを立ち上げて勝負の日々を送っている人、あるいは失敗しながらも貴重な教訓を手にした人など、お手本となる人々を毎日のように目にすることができます(メディアと言えば新聞かテレビだった時代に、政治/スポーツ/芸能以外の分野で個人がここまで取り上げられることは希だったでしょう)。彼らを見て、何の憧れやあせりも抱かずに、十年間何も言わずに働けと言う方が無理な話です。しかも年功序列、一度就職すれば定年まで安泰――などという時代は終わりました。将来の不安を相殺するようなビジョンを提示すること、それが経営者に課せられた使命の1つだと思います。

なんだか三流ビジネス書のような陳腐な表現になりましたが、別に全ての経営者がスティーブ・ジョブスになれと言っているわけではありません。自らその業界に身を置き続けているのには、何かしら夢や希望があるからでしょう。それを自分の言葉で社員に、そして外の世界に語りかける努力をすれば良いのだと思います。できればその言葉が、ネットで示されるビジョンを上回るのが理想ですが……とりあえず「こっちだって忙しい、そっちから聞きに来い」という姿勢のままでは、「3年で辞める若者」を責める資格は無いのではないでしょうか。

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