検索キーワードの恐怖
ITmedia ニュースに、検索データから個人情報が暴かれることを防ぐためには何をすれば良いか、について解説した記事が掲載されていました:
■ 安全に検索するための6つのTips (ITmedia)
ここまで神経質になることもないんじゃ・・・と思われるかもしれませんが、こうした防衛策は今後重要性を増してくるに違いありません。先日、AOL から検索データが流失したという事件がありましたが(詳しくは同じく ITmedia のこちらの記事をご参照下さい)、その検索データをめぐってこんな騒動がありました:
■ digg - AOL User 927: Scariest AOL user search record (Digg)
もともと"AOL User 927 Illuminated"という記事があり、ここでは「AOL のユーザー927番(流出したデータでは、ユーザーにはIDではなく番号がふられていた)がどんな生活を送っていたのか?」を探る試みがなされていました。実は927番の検索キーワードの中には、レイプや児童ポルノなど異常性愛に関するものが多く、流出後から注目を集めていたのです。
The record starts out blandly enough in March. First he's concerned about how long it takes broken legs to heal. Then he investigates human mold. Perhaps staying at home after an accident? Then he peeks into a little dog sex, but the leash isn't very long, the most prurient site he reaches being SFweekly.com, a regular ol' newspaper.
Later that day he looks up flowers. flowers aster. butterfly orchid. The next day, more flowers, followed by a little forced rape porn, testicle festivals and slow-dancing steps. Must be planning a big night.
(記録は3月から始まっている。最初は穏やかなものだ。まず彼は、足の骨折がどれくらいで治るのかを知りたがっている。次に調べたのは人間の形をした金型についてだ。事故に会い、自宅療養していたのだろうか?次に検索したのは小犬のセックスだったが、まだ欲望は抑制されていて、彼が訪れた最もみだらなサイトは SFweekly.com 程度だった。
その日の遅く、彼が調べたのは様々な花だった。翌日も花の検索は続いたが、その後に彼が検索したものはレイプもののポルノ、睾丸状のものを祭るお祭り、スローダンスのステップだった。何か夜に向けて大きなことを計画していたに違いない。)
と、さらに詳細な分析が続きます。さらにこのエントリをブックマークした Digg の記事では、多くのユーザーがコメント機能を通じて分析を続行し、あげく「AOL 927番は誰か」という魔女狩りのような雰囲気にまで発展してしまっています。
もちろん AOL 927番の検索内容には寒気がしますが、ネットを通じて多くの人々が「魔女狩り」に参加し、プライバシーを暴こうとしたことにも恐怖を感じます。さらにこの騒動が明らかにしているのは、検索キーワードがいかに自分の私生活に密着しているかということ。AOL 927番が実際にはどんな生活を送っていたか分かりませんが(2ちゃんねる風に言えば「釣り」だった可能性だって否定しきれません)、Digg を通じて想像された人物像には説得力があります。それが可能な程のデータを、検索キーワードの中から拾うことができるのです。
考えてみれば、検索キーワードとは「自分の関心事」「欲望」「これからしようとしていること」を言葉にしたものです。しかも検索結果を良くするために、キーワードは具体的で、詳細になります。しかも「ネットを検索すれば何か出てくる」という状況になった現代では、検索エンジンに頼る領域はますます広くなる傾向にあります(最近どこかのお店の電話番号を調べるのに、104へダイヤルした人はいますか?)。僕らが思っている以上に、検索キーワードには「ありのままの自分」が出てしまっているのでしょう。
最近は Google などで自分の検索履歴を残すことができますし、気になる方は1ヶ月程度履歴を取ってみて、検索キーワードがどの程度自分の「足跡」として感じられるかを確かめてみてはいかがでしょうか。僕もたまに見返してみるのですが、「ああ、先月は○○が欲しくて、○○に行こうとしていたっけ」などとまるで日記のように過去のことが思い出せます。まぁ、それはそれで便利なのですが、これから検索エンジンがますます生活に密着した存在になるであろうことを考えると、ちょっとゾッとしますね。