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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

アンチ・ペーパーレス

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IT化でペーパーレスが実現 --- とそんな簡単にいかないことは、今では誰もが知っています。ソフトウェアのマニュアルからプレゼンテーションの配布用資料、稟議書まで、オフィスにはまだまだ紙が溢れています。しかし方向性としては「情報はデジタル化して、少しでも紙を減らそう」という発想が主流であることは確かでしょう。

ところが、この流れに逆流している分野があります。その1つが「社内報」。そう、毎月知らないうちに机の上に置かれていて、誰かの出産報告と結婚式の報告が満載の小冊子です(今の時期なら「新入社員のご紹介」でしょうか)。その社内報が復活の傾向にあるという話を、以前Polar Bear Blogで書きました:

社内ブログで社内報の活性化を(Polar Bear Blog)

また今朝の日経産業新聞でも、社内報が活躍中という記事が掲載されています:

■ ネット時代でも・・・社内報を大活用(日経産業新聞 2006年4月6日第22面)

記事によれば、日本経団連の調査では調査対象企業の85.1%が社内報を発行しているとのこと。使い道も、経営陣のメッセージ発信、従業員の家族を対象にした情報発信など、多岐に渡っているようです。

社内報というと、各社どれもカラフルで、意外にボリュームがあったりします。作成・発行にかかる手間とコストは馬鹿にならないでしょう。なぜデジタルではなく、紙媒体で社内報を発行するメリットがあるのでしょうか?ちょっと考えてみると、

  • (PCスキルがない、インフラが整っていないなどの理由で)ネットが使えない従業員にも情報発信できる
  • 社内外を問わず、いつでも・どこでも・すぐに閲覧ができる
  • 長文を掲載しても、疲れずに読んでもらえる
  • 活字というステータスがあるため、重要な情報を伝えるのに向いている

などといったところでしょうか。最後の「活字というステータスがあるため、重要な情報を伝えるのに向いている」という部分は賛否両論あると思いますが、例えば社内で優れたプロジェクトを表彰する「社長賞」のようなものがあった場合に、その結果報告をWEBサイトと紙媒体で行うのには大きな差が出ると思います。もし社内報で、フルカラーの写真と共に「今年の社長賞受賞者に聞く」などといった記事を掲載してもらえたら、社長賞のステータスや受賞者の士気は大きく向上するのではないでしょうか。

いずれにせよ、紙媒体ならではの利点というものがあることは確かです。Polar Bear Blogでは「社内ブログなどのグループウェアと社内報の連携を取ったら面白いのではないか」という結論を書いたのですが、もうちょっとラディカルに、「紙媒体を積極的に利用することを考えてアプリケーション/サービスを設計する」という思想があっても良いかもしれません。

どういうことかというと、例えばスケジュール管理アプリケーションを考えたときに、重要な予定を一覧表にしてプリントアウトしてくれる機能(しかも標準的な手帳にはさむのにピッタリのサイズで)などというものがあったら便利ではないでしょうか。「重要な予定を忘れずに覚えておくようにする」という目的を、アプリケーションの中だけで達成しようと考えるのではなく、紙という媒体にも頼ることを最初から想定してしまうわけです。「紙を減らそう」という発想を捨ててしまうので、名付けて「アンチ・ペーパーレス」。

情報のアウトプットが紙でもよい、ということになると、様々な展開が可能だと思います。例えばブログに、「この記事を本当にメールする(=手紙を送る)」ボタンを付けるとか。自分の書いたブログをおばあちゃんに読んでもらいたくなったら、そのボタンを押して住所を入力し、さらに「大きめのフォントで印字」オプションを選択するだけで、記事が手紙となって届けられるわけです(よく考えたらこれ、FlickrのDPE&デリバリーサービスの手紙版ですね)。他にもニュースサイトに掲載されている記事をいくつか選択すると、チェックされた記事を新聞風に再構成して出力してくれる機能、なんてどうでしょうか。

環境保護団体の方が読んだら激怒するような内容を書いてしまいましたが、不要な紙を削減することにはやぶさかではありません。しかしデジタルのサービスが、もっと紙に頼ることを考えても面白いのではないか---と思って書いてみました。と思ったら、会社のシュレッダーがいっぱいで停止中。やっぱり紙は少なければ少ないほど良い?

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