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元証券アナリスト、前プロダクトマネージャー、既婚な現経営者が、日頃の思いをつづります。

昭和19年に書かれた本:日本的霊性

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昭和19年といえば太平洋戦争中。検閲も厳しかったであろうこの時期に出版された本を、今更読んで感動するとは夢にも思わなかった。

読了したのは、鈴木大拙著「日本的霊性」(岩波文庫)。決して日本精神を鼓舞するのではなく、どの国も民族もそれぞれ霊性が存在すると説く。ただ、それぞれの特性が異なるのだと。

解説にこう記されている:

「第二次大戦の勃発当初から、わが国の敗戦の必至を信じていた著者は、そうなったときに日本が世界の精神文化に貢献すべき大なる使命は、日本的霊性的自覚の世界的意義を宣揚するほかにないとして、この著述を企てたに違いない。先生のこれまでの著書には、「日本的霊性」なる語は全く見出され得ないからである。すると戦争を機縁として書かれた本書は、戦争や敗戦を超えて永久に生き続ける日本的霊性的自覚の思想を確立したものとして、我々日本人にとって特異な意味をもつと思うのである。」

戦後まもなく、昭和21年に再版されたとあるが、戦後のどさくさで生きるのに必至だった当時の日本人の何人がこの本を読んだのだろう。その後、経済成長に専念した世代にも広く読まれたのだろうか?いずれにしろ、「失われたxx年」とかいわれている今の私たちにこそ、示唆に富む本だと思う。

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