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元証券アナリスト、前プロダクトマネージャー、既婚な現経営者が、日頃の思いをつづります。

定年退職

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「私もあと3年で定年で...」日本なら当たり前の表現を耳にし、あらためて、私が会社を経営していたのは日本ではなくアメリカだったのだとつくづく感じた。

日本の労働規約あるいは就業規則に類似しているのは多分Employee Handbookだろう。会社設立当時このEmployee Handbookの作成も手がけたが、そのどこにも、定年退職の規定はなかった。逆に、”当社はワシントン州法にのっとり、employment at willを実施しています。“との一文を入れるよう、人事関係に詳しい弁護士からアドバイスを受けたことを今でも覚えている。Employment at will... すなわち、従業員側も会社側も、一方からの意思で雇用関係を解消でき、それには特別な理由は必要ないのだ。同じ弁護士から、採用時従業員に署名してもらうオファーレターにも、employment at willであることを明記するよういわれた。

決して気持ちの良いものではないが、やむを得ず従業員にやめてもらった事が何度かある。そのたびに、ワシントン州が employment at willを認めていて良かったと思ったものだ。それでも、その従業員が 1)40歳以上、あるいは 2)女性、あるいは3)マイノリティーの場合は、特に気をつけるようにというのが、これもまた同弁護士のアドバイスだった。このいずれかに当てはまる場合、従業員が会社側の決断を不服として訴えた場合、従業員に有利になることが多いらしいから。

Employment at willを強調する米国企業。定年退職制度を設ける日本企業。どちらも、労働力の費用対効果を高く保ち、かつ景気の安全弁を確保するのがその目的だが、それを達成するための方法が全く違うのはおもしろい。

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