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【続編】Facebookは日本に普及するだろうか?

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アーリーアダプターや広告関係者の間で、Facebookの話題が一気に増えてきた。

実際にFacebook公表値に基づき統計データを開示しているFacebakersを見ても、日本での伸びが急加速をはじめた可能性が見受けられる。

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当ブログでは、過去にもFacebookの日本普及に関する考察を書いているが、その続編として、10月21日時点の現状と今後をおさらいしてみたい。

Facebookは日本に普及するだろうか? (9/2) 
実名ソーシャルメディアのメリットってなんだろう? (10/4) 
 
特に注目すべきは、10月に入ってからのブログ・ラッシュだ。影響力の強いギーク系ブロガー(はてなユーザーが多い)が、Facebookの楽しさを取り上げ、それがブログ連鎖のカタチでつながったものだ。はてなブックマークが100以上ついた大ヒット記事だけを取り上げてみてもこれだけある。

フェイスブックがはじまりそうな件 (10/7) 
フェイスブックが面白い (10/11) 
フェイスブックでオフ会を開催して感じていること (10/11) 
facebookは変わっていたよ (10/12) 
フェイスブックがそろそろ日本で爆発する?その理由・始め方などまとめ (10/12) 

さらに詳細はこちらのまとめをどうぞ。
ここ最近のFacebookまとめ - duck75のはてなダイアリー (10/9) 
 
この中で共通しているのは、リアルタイム性の高いFacebookユーザーインターフェースに対する賞賛だ。何かユーザーがアクションや書き込みをした場合の反応時間が非常に早く、それが楽しくて中毒性を生み出すという点を多くのブロガーが強調している。

実際、Facebookのアテンションは実にスマートに設計されている。友人申請やメッセージ、「いいね」クリックなど、自分自身に関係するさまざまな反応がリアルタイムにレスポンスされる感覚は、今までのウェブでは味わったことのない、チャットに近いユーザー体験なのだ。

Googleの差別化要因のひとつも、GFS(Google File System)等をベースにした大規模システム運用技術、それによる高速フィールにあったが、Facebookにおいても同様のようだ。デイリーユーザー2.5億人に対してこのようなユーザー体験を実現する超大規模システム運用技術は、他社の追従を許さないものと言えるだろう。

【参考資料】
Facebook、memcachedに300TB以上のライブデータを置く大規模運用の内側 (Publickey)
Facebook の データセンター戦略に関する FAQ (Agile Cat)
Facebook のスケール感覚に驚愕! (Agile Cat)

またもうひとつ感心するのが、友人関係を広げていく工夫がいたるところにされていること。mixiの平均マイミク数が25人に対して、Facebookの平均友人数は130人というのは、両者の特性をあらわす上でよく引用される数値だ。実名性であること、そのため交流がフランクかつフレンドリーに行われていることもあいまって、リアルと大差ない感覚で人脈が広がっていく点が大きな強みになっている。

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【Neisen Netviewより、2010年9月度調査】
 
現在、Facebookユーザーの53%はTwitterユーザーだが、Twitterコアユーザーが徐々にFacebookのリアルタイム反応や奥深さに惹かれ、Facebook利用に移行していくケースが多くなってきたようだ。
 
前回記事(Facebookは日本に普及するだろうか?)で詳細を記載しているが、Twitterが急速に普及したステップを振り返ると、まずアルファブロガーを中心としたコアユーザー内での利用が活発化した後、著名人利用や書籍ラッシュによる一般ユーザーへの波及、続いて企業利用の活発化というステップがあった。

Facebookの場合も同様のステップをたどりつつあるが、さらに追い風なことがいくつかあるように思う。
 
(1) 「The Social Network」が1月15日に日本でも公開されること
公開直後に二週連続で全米トップとなり、評論家も絶賛しているFacebook題材の映画「The Social Network」(「セブン」「ファイトクラブ」のデヴィット・フィンチャー監督)が、日本でも1月15日から公開される。そのタイミングを狙って、すでに多くのマスメディアが動き出している。当社も数多くの書籍等の執筆依頼をいただいており、テレビや雑誌露出も当時のTwitterより多くなることは間違いなさそうだ。
 
(2) ビジネスパーソン向けソーシャルネットワークが日本で不在なこと
米国ではLinkedInがあり、ビジネス人脈開拓やリクルーティングなどに広く活用されているが、日本にはその土壌がない。ビジネス向けには実名が必須なため、現在の国内SNSでは代替することは難しかった。終身雇用のなくなりつつある日本において、人脈ネットワークは従来以上に貴重なものとなることは間違いなく、この分野においてFacebookは国内唯一の存在となる可能性が高い。リクルートと連携したコネクションサーチなど、その第一歩と言えるアプローチだ。
 
(3) 企業利用がTwitterより先行しそうなこと
Twitterの企業利用に関しては、当時ソーシャルメディアに対する理解不足のため、活用に踏み切るまでに時間のかかる企業が多かった。その結果、Twitterの利用者普及と企業利用にはタイムギャップが存在していたが、Facebookの場合はその壁が低くなっており、多くの企業が現時点で先行参入を計画しはじめている。Twitterケースで先行者メリットが明確になったことも一因だ。利用者にとっても企業にとっても、TwitterがFacebookの良い入門編になった印象がある。そしてこれは著名人やアーティストも同様で、先行優位を狙う著名人の参入が続けば、Facebookの知名度が一気に向上するかも知れない。

(4) Facebookには、企業支援エコシステムが成立しやすいこと
Twitterはその極めてシンプルな構造のため、広告代理店やWeb制作会社にとってビジネスになりにくい側面があった。それに対してFacebookは、(a)FacebookファンページやFacebookアプリの制作需要、特にコマース連動やインタラクティブアプローチなど高度なコンテンツを制作できる点 (b)FacebookオープングラフAPIによる自社サイトのソーシャル化で、ウェブ制作需要が見込まれる点 (c)Facebook Adsなど日本でも利用できる広告媒体が標準装備されている点(ただし現在は直販のみ) などの点で、Twitterよりエコシステムが成立しやすい。特にコマースとの連動などは有望だろう。そのため彼ら周辺事業者がFacebook企業普及のリード役になる可能性が高い。

前回記事を書いたのは9月2日、わずか1ヶ月半前だが、Facebookの国内普及は当時よりかなり現実性を帯びてきた印象がある。ただし、これらの楽観的予測が必ずしも調査結果で裏付けされているわけではない。
 
【参考資料】
mixi, Twitter, Facebook 2010年9月最新ニールセン調査 (10/19) 
 
当ブログでは、定期的にニールセン調査を発表するとともに、最新数値をもとに、これらの考察も適時見直していきたいと考えている。
 
また、この記事最後で取り上げたFacebook Adsについて。現在はセルフ広告(リスティング広告のように広告代理店を経由せず自社で直接投稿が可能な広告)だが、今後はリスティング広告同様、広告代理店経由も開放されていく可能性が高いように思う。

次回記事では、Facebook普及とともに関心が高まるであろうFacebook Adsに関して、少し深堀りして、効果データなどを紹介したい。


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