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【2010年8月最新版】直近決算発表に基づくmixi,GREE,モバゲーの業績比較 ~ モバゲー独走状態だが、グリー巻き返しの兆しが

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日本三大SNSサービスの2010年4-6月期の四半期決算発表が出揃った。

3ヶ月前の記事では、自社ゲームとオープンゲームの「ハイブリッドモデル」を選択したモバゲータウン(以下、モバゲーと省略)が、「オープンモデル」(オープンゲームのみ)のmixiと「クローズモデル」(自社ゲームのみ)のGREEを圧倒し、ひとり勝ちの様相となったことを報じた。

【2010年5月版】直近決算発表に基づくmixi,GREE,モバゲーの業績比較 (5/19) 

3社の異なるコンテンツ戦略の結果がはっきりと数値としてあらわれた前四半期だったが、この4-6月も基本的な傾向は変わらないようだ。ただしオープン化に踏み切ったGREEに回復の兆候があらわれるなど、見逃せない変化が発生している。またFacebookの本格上陸、スマートフォンの浸透など、3社を取り巻く市場変化は急激に変化している。今回は、特にそれらにフォーカスしながら、激動期にある3社の業績と今後の戦略について分析してみたい。

なお,この分析レポートは,各社が投資家向けに公表している最新の決算報告,および広告代理店・クライアント向けに発行している媒体資料を情報ソー スとしている。当レポートにおいては,それらの客観的な数値に基づき,できる限り公平な視点で3社業績を比較することを心がけている。
 
 
■ 2010年4-6月,四半期決算の業績比較

まずは各社の財務データ分析からはじめたい。下記の表は,2010年4-6月期の全社損益比較(上表)と,その中でSNS事業のみを抽出とした売上比較(下表)である。表内で水色の部分,前期比は2010年1-3月決算と比べたものだ。

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全社業績で見ると,絶好調のDeNA,堅調なGREE,伸び悩みのmixiという構図が3期連続で続いている。特にモバゲーの好調ぶりは出色だ。SNS事業単体売上で見ると、直前期の1.5倍、この半年で3倍という驚異的な成長を遂げている。一方,GREEは1.1倍、mixiはほぼ横ばいが続いている。そのため、会員数は3社とも2000万人と均衡しているにもかかわらず、売上規模でモバゲーはGREEの約1.9倍、mixiの5.4倍と大きな業績差がつく結果となった。
 
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SNS事業は会員課金売上と広告売上に分解できる。3社とも広告売上にはそれほど大きな変動はなく,会員課金売上が業績を左右するドライバーであることがわかる。これを図式化したのが次のグラフだ。
 
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2009年のGREE独走を支えていたのはこの80%を誇る会員課金率だったが、現在はモバゲーがそれを抜き、売上の91%が会員課金、つまりソーシャルゲーム売上となっている。このソーシャルゲームがなぜここまで儲かるのか、その原理と収益方程式については次の記事で分析しているので、未読の方は参考にしてほしい。

「ソーシャルゲーム」はどうして儲かるんだろう? (7/20) 

オープン化によるプラットフォーム収益もさることながら、モバゲーの急成長を支えている大きな要因は、快走を続けている日本最大の大ヒット・ソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」だ。サービス開始後、1年近くたった現在でも成長は続いており、この7月にも最高売上(未確認情報だが、月売上20億円を超えているという噂もある)を更新する見込みであることが発表されている。それに対してGREEは看板ゲーム「釣り★スタ」をはじめとする既存内製ゲームの勢いが減衰していることが成長鈍化につながった。ただしこの6月に投入されたモンスター育成ゲーム「モンプラ」は大ヒットの予兆があり、GREE復調のきっかけになる可能性があると予想している。
  
  
■ SNSサービスとしての比較

続いて、SNSとしてのサービスを比較してみたい。まずは基本情報となる会員数とページビューの推移を抑えておこう。

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会員数は3社とも大差なく、約2000万人とほぼ均衡している。

ポイントはページビューだ。2010年前半はモバゲーのみの急拡大が続き、5月には700億PVを超えたが、さすがに上位均衡点に達したようだ。参考まで、日本の携帯総トラフィックは約5000億ページビュー程度と推定されるため、モバゲーだけで10%以上を占めていることになる。この結果、6月は微減、決算後に発表された7月月次推移でもほぼ平行線をたどった。

一方、GREEは昨年10月以降ページビューが低迷していたが、新ゲーム「モンプラ」と6月後半にベータ版としてスタートしたオープンゲームがともに好調でページビューを大きく伸ばし始めている。

GREEとモバゲーの場合、ゲームをはじめたユーザーが無料から有料に切り替わるタイムギャップがあるため、ページビューと会員課金の伸びには約2、3ヶ月程度のズレが発生する。逆にいうと、過去の推移で見ると、ページビューの推移は、ほぼ四半期ずれで売上推移と一致する傾向がある。つまりこれはモバゲー均衡とGREE復調の兆しと捉えることができる。

【2010年2月版】直近決算発表に基づくmixi,GREE,モバゲーの業績比較
【2009年11月版】直近決算発表に基づくmixi,モバゲー,GREEの業績比較


mixiは、ソーシャルゲームよりもソーシャルグラフ拡充を優先するという他2社と異なる長期戦略を打ち出しており、新サービスも、mixi同級生、mixiボイス強化、mixiカレンダー、mixiフォト、矢継ぎ早に発表している。その結果、月間ログインユーザー数は大幅に伸び、3サービス中、最もアクティブ会員率が高いと推測されるが、残念ながらページビュー成長には結びついていないため、売上も横ばい状態が続いている。

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また参考まで,3サービスの会員属性を比較しておきたい。この四半期での大きな変化はモバゲーの高齢化とGREEの低年齢化だ。
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【2010年6月のユーザー年齢比較】
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【2010年3月のユーザー年齢比較】

従来は「10代のモバゲー、20代のmixi、30代のGREE」という印象が強かったが、ソーシャルゲーム普及とテレビ広告によってGREEとモバゲーの年齢属性はかなり近づいてきた点に注目したい。

その他は特に大きな変化が見られない。広告媒体力ではmixiが他社を圧倒(広告売上で1.5倍以上)しているが,これは女性比率が高く,F1層(20-34才女性)の支持が多いためと推定される。
 
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■ 会員あたり売上(ARPU)の分析


続いて,3社のマネタイズ特性を探るために,会員あたりの月売上高(以下、ARPU: Average Revenue per Userと省略)を比較をしてみたい。

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この表は,各SNSが会員一人あたり月にどのくらいの売上をあげているかを示している。例えばmixiでは,1会員につき、広告で52円/月(広告ARPU),会員課金で9円/月(会員ARPU),合計61円/月(総ARPU)の売上をあげたということを意味している。

広告ARPUはmixiが他媒体を大きく引き離しているものの,会員ARPUと比較するとその差は小さく,業績ドライバーは明らかに会員ARPUであることがわかる。最大のモバゲーと最小のmixiとの格差は35倍にもなり、これが決定的な収益格差となっている。
 
モバゲーの会員ARPUは伸び続け、ついに300円を突破した。仮にモバゲーのアクティブ会員率を60%、有料会員比率を5%と仮定すると、有料会員は月に1万円以上もモバゲーに支払っている計算になり、これも上位均衡点に近づいたと言えるだろう。

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参考まで,GoogleやYahoo,Facebookなどの「ユニークビジターあたりの2009年度売上高」が米国Business Insiderで記事化されている。これを1ドル90円で月売上に換算し,上図と同一のモノサシでグラフ化すると次のようになる。

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Googleの高い収益性にも驚かされるが、モバゲーやGREEはそれを上回っており、サイトから、特にソーシャルゲームのマネタイズは日本が進んでいることがわかる。

日本と海外のグラフでは「会員数」と「月間ユニークビジター数」の違いがある。例えばmixiでは7月末の会員数2102万人に対して,月間ユニークビジ ターは1430万人と会員数の68%となっている。仮にこの数字をGREEおよびモバゲーにも適用すると、ユニークビジターに対するARPUはモバゲーで約506円,GREEで約260円となる。モバゲーのARPUは米国で最も効率よく稼いでいるGoogleの約3.7倍の数値であり,海外から見ると驚異的なマネタイズ効率と言えるだろう。


■ 今後の戦略について


最後に3社における今後の戦略を比較したい。ソーシャルゲームで世界を目指すGREE、モバゲーと、ソーシャルグラフ獲得と活性化に比重をおくmixiの間で戦略の違いが明確になってきている。
 
1.ソーシャルゲームで世界を目指すGREE、モバゲー
 
現在の主戦場である3G多機能携帯電話はこれからシェアが低下し,2012年には出荷台数ベースでスマートフォンに逆転されると予想されている。(下図参照: ガートナー「Mobile Internet Report」予測値より) 
 
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国内外スマートフォン動向を総まとめ - iPhone vs Android の先に見えるもの (4/26) 

また日本において、PCソーシャルゲーム分野はブルーオーシャン(未開拓市場)に近い。現在ほぼ100%依存している国内の多機能携帯トラフィックは近い将来は頭打ちになることが予想されるため、GREEおよびモバゲーにとって、PCおよびスマートフォンへの進出が極めて重要な成長戦略となる。

ここでポイントは (1)ガラパゴス化していた多機能ケータイと異なり,PCおよびスマートフォンはワールドワイドな争いになること。(2)PCではFacebook,スマートフォンではAppleという覇者的プラットフォーマーがおり,それぞれ参入障壁が高く,マネタイズも容易ではないという点だ。現在の競合状況をチャートにあらわすと次のようになる。

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最もチャーミングな領域はホワイトスペース、つまりiPhone/iPad/Androidがカバーするスマートフォン/タブレットにおける世界展開だ。

モバゲーはすでにキラーゲーム「怪盗ロワイヤル」の英語版である「Bandit Nation」をFacebookとiPhoneに投入、しかも早々とFacebook撤退を決定、収益性の高いスマートフォンに当面集中する作戦に出た。また単純なSAP(Social Application Provider、ゲームデベロッパーのこと)ではなく、「Mini Nation」というコミュニケーション・プラットフォームを投入している。これは資本提携関係にある大手SGN(Social Gaming Network、ソーシャルゲームを横断するコミュニケーションプラットフォーム)のOpenFeintと連携したプラットフォームであり、海外向けモバゲータウンの基礎となるものだ。ただし現時点ではiPhoneアプリとしての提供のため、Appleに課金というキモを握られている。また純正SGNであるApple Game Centerも登場予定のため先行きについては不透明感があるが、極めて短期間にトライ&エラーを繰り返すことで成長していくDeNAの事業展開スピードは見事という他ないだろう。

一方、GREEの展開は比較的ゆったりしている。iPhone対応版は提供したが、あくまでPC版GREEの延長にあるシンプルなものでゲーム機能は未実装だ。こちらは、Appleにキモを握られているアプリではなく、HTML5普及を睨んで、Androidでも共通で利用できるウェブを中心軸にした戦略とみてとれる。

PCでもモバゲーが先行した。国内ではPC上の覇者といえるYahooと提携し、10月には携帯と連動したPCソーシャルゲーム・プラットフォームが登場する。GREEは現時点で動きはなく、当面のライバルはmixi、ハンゲーム、Facebookだが、潜在的会員数やソーシャルプラットフォーム・ノウハウにおいてYahooモバゲー連合軍が圧倒しており、優位に展開することが予想される。

Yahooとモバゲーの強者連合,そのインパクトと背景にある競争戦略を読む(2/10) 

2.ソーシャルグラフ拡充と活性化を目指すmixi

mixiは完全に独自路線をとりはじめた。ソーシャルグラブの拡充と活性化だ。もとより、GREEやモバゲーがゲームを前提としたソーシャルグラフ(バーチャルグラフと呼ばれ始めている)であるのに対して、mixiのそれは本格的なソーシャルグラフだ。

そしてmixiの視界にあるのは、GREE、モバゲーというより、最強の敵であり、SNS世界覇者であるFacebookだ。

FacebookがローカルSNSを逆転する時 (8/2) 
世界のSNSマップ最新版。Facebookが131ヵ国中111ヶ国でトップ (6/15) 

ただし実名制をとっていないことが、最強の敵、Facebookのソーシャルグラフに対して質的に劣っている点だ。そしてなにより、Facebookは日本においてもついに急成長をはじめている。コムスコア社6月調査によると、月次ユニークユーザーで、mixi 1350万人に対して、Facebook 450万人と、なんと1/3規模まで急追しているのだ。この点は別途ブログで分析したいが、今のままではFacebookとGREE/モバゲーに挟まれるカタチで、mixiは自身のポジションを確保できなくなる可能性がある。

9月10日に発表されるmixi meetup 2010で発表される予定の新プラットフォームで巻き返しを図れるかが大きな焦点となるだろう。

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余談だが、筆者も第三部、Social Meetupにてモデレータを努めさせて頂く予定だ。純国産のSNSとして、ぜひこのピンチをチャンスにかえて起死回生を図ってほしい。Facebookのユーザー層はビジネス系アーリーアダプターだが、mixiは学生とF1女性に根強い固定利用者がいる。この層を活かしてどう成長させていくかがキーとなるだろう。
 
 
■ まとめ ~ 業績分析と課題

1. mixi
ソーシャルゲームをベースとした収益競争では他2社に大きく引き離された。活路はソーシャルグラフ拡充とそれに付帯したビジネスだが、ソーシャルグラフのマネタイズはソーシャルゲームよりはるかに困難であり、いばらの道が予想される。また宿敵Facebookもついに急追をはじめており、正念場が近づいている。新プラットフォームに期待したい。

2. GREE
ついにオープン化に踏み切ったGREEは、新内製ゲーム「モンプラ」好調とも相まってページビューを再び成長軌道に載せることに成功した。今後、それが収益に結びつくことが予想され、大きく差をつけられたモバゲーとの激しい闘い、特にSAP争奪戦が予想される。またPC進出を巡り,新たな業務提携があるのかも注目されるところだ。
 
3. モバゲー
3期連続でひとり勝ちを続け、今や他2社を大きく上回る業績となっている。ただしすでにページビュー、ARPUとも上限に近づいている可能性が高く、PCおよびスマートフォン進出が成長戦略の要となった。最大の強みは打ち手も素早さだが、世界的なプラットフォームを狙うには、AppleやGoogle、FacebookといったIT界最強企業との戦いになる可能性が高く、パートナー戦略がキーとなりそうだ。
 
 



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