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【最新版】Facebook ビジネスモデルを徹底分析 ~ mixi,GREE,モバゲーと比較

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今年1月31日に,Facebookのビジネスモデルを日本の3大SNSと比較する記事を書いたところ,大きな反響をいただいた。

Facebook ビジネスモデルを徹底分析 ~ mixi,GREE,モバゲーと比較 (2010/1/31)

それから一ヶ月あまりが経過したが,この間に日本の三大SNSが2009年10-12月期決算を発表し,2009年を通じた実績が明確になった。またオープン化に伴い,三者のビジネスモデルや収益力に大きな違いが出始めていることも明らかになってきた。

【2010年2月最新版】直近決算発表に基づくmixi,GREE,モバゲーの業績比較 (2010/2/10)

さらに昨日,前回分析記事の基礎となったFacebookの2009年収益予想(2009/7, Solicon Alley Insider) が上方修正(2010/2, Inside Facebook)された。Facebookは業績非公開のため今回もあくまで推測だが,最新記事に基づく収益予想は次のようものだ。(1ドル90円換算)

  • セルフ広告売上  350百万ドル (315億円)   ...  200百万ドルが上方修正
  • マイクロソフト提携広告売上  50百万ドル (45億円)  ... 150百万ドルから下方修正
  • ブランド広告売上  225百万ドル (202.5億円)  ... 125百万ドルから上方修正
  • 仮想グッズ等売上  10百万ドル (9億円)  ... 70百万ドルから下方修正

このうち,セルフ広告売上マイクロソフト提携広告売上ブランド広告売上の広告系が全体の98.5%と売上の大半を占めており,Facebookの収益は日本のSNSと比較して広告に大きく依存していることが明確になった。

かなり荒い修正だが,なにぶん未公開企業であり,かつ収益ドライバーが確立したのもここ最近のことなので仕方がないと考えたい。2009年を通じた売上予測は635百万ドル(571.5億円),前回予想の550百万ドル(495億円)より15%以上も上方修正されたことになる。

以上より,Facebook,国内三大SNSとも2009年を俯瞰するより正確なデータが整った。他の参考データについてもより精査し,前回記事の内容を最新情報でアップデイトしてみたい。

  

■ Facebook 収益構造の分析

まずFacebookの収益構造をおさらいしよう。広告系売上の3タイプは次の通り。これらはすべてB2Bモデルで,Facebookから見た直接の取引先は,(1)はクライアント (2)はマイクロソフト,(3)は専属広告代理店(エージェンシー)ということになる。

(1) セルフ広告売上 (315億円)
AdwordsやOvertureと同様,広告主は広告代理店を経由することなく,直接ウェブ上から広告出稿できる仕組みで,Facebook Adsとネーミングされている。実際に入力してみると驚くほど簡単で,入力には5分もあれば十分。広告は承認を経て約1-2日後に表示されはじめる。下記Facebook画面では右側ピンクマーク部分に表示されているものがそれにあたる。

(2) マイクロソフト提携広告売上 (45億円)
文字通り,マイクロソフトと提携し,彼等の提供するバナー広告やスポンサードリンクを表示するものだ。なお契約は2006年に締結されたものだが,2009年に期限が来ており,現在は解消されているようだ。下記Facebook画面では上部のバナーがそれにあたる。

(3) ブランド広告売上 (202.5億円)

これは日本でいうタイアップ広告で,Facebookに直接問い合わせて(実際には専属のエージェンシーが対応することになる)統合的なキャンペーン広告を作成するものだ。具体的にはファンページを機軸に,(1)セルフアド広告や(2)マイクロソフト広告,さらにはFacebookアプリなどを組み合わせてカストマイズされたキャンペーンパッケージだ。予算で最低で500万円程度からとなるようだ。

Facebook_screen2_4    
 
続いて仮想グッズ等売上だが,現時点では次の3タイプにわかれる。Facebookから見た売上先は,(4)と(5)が会員から直接課金するB2Cモデル,(6)はアプリケーション・デベロッパー(以下,SAP:Social Application Proviverと略)からのB2Bモデルとなっている。

(4) 仮想グッズ販売(GiftShop)からの売上
Facebookの直営コマースショップであるGiftShopの売上。ちなみに米国FacebookのGiftShopでは,仮想グッズ(Virtual Gifts,E-Cards,Charity)だけでなく音楽MP3ダウンロード販売(Music and MP3s)や物販(Real Gifts)まで商材を広げ始めている点が注目される。
Facebook_giftshop


(5) 課金決済サービス(Facebook Credits)からの売上
アプリ・デベロッパー(SAP:Social Application Providerと略)向けに実験的に開始された直営課金決済システム,Facebook Creditsからの売上。いままでSAPはギフトやアイテムの課金決済手段としてサードパーティ(Offerpal,Super Rewards等)提供サービスを利用していたが,これに競合するサービスをFacebookが直接運営しはじめたということだ。課金手数料は外部サービスと比較してはるかに高い売上の30%となっている。

Facebook_credits

(6) アプリ認証サービス(Verified Apps)からの売上
Facebookのアプリはすでに50万種をゆうに超え,1日2000以上の新しいアプリが追加されている。この玉石混合のアプリにおいて,SAPがFacebookに年間375ドルを支払うことでアプリ認証サービスを受けることができる。特典としては,アプリケーション・ディレクトリーの画面でもおすすめアプリケーション(下記画面のピンクマーク部分)として推薦される他,広告クーポン出稿のクーポンも発行されるようだ。

Facebook_apps2

 
 
■ 日本のSNSとのビジネスモデル比較

ビジネスモデルで先行している日本のSNSと比較すると,Facebookの収益構造や収益性はどうなっているのか気になるところだ。この節では,まずSNS単体での比較,さらにSNSエコシステム全体での比較を通じて,日米のSNSビジネスモデルを徹底分析してみたい。

 
1) SNS単体での収益比較

まず,SNS単体でのビジネスボリュームを比較してみよう。日本の代表選手としては,おなじみのmixi,GREE,モバゲーだ。3社発表の四半期決算に基づく2009年(2009/1-2009/12)売上を,前述Facebookの2009年度売上予測と比較したのが次の表だ。

Chart1_4    

ここで広告売上純広告タイアップ広告アフィリエイト広告を含み,アプリ売上はアバターやアイテムなどの仮想グッズ販売会員課金を含んだものである。

なお会員数について補足したい。Facebookはすでにアクティブユーザーで4億を超える規模になっているが,この表では正確にARPU(Average Reveneu per User, 会員あたりの月売上)を計算するために,2009年を通した平均会員数とした。

Facebookは日本のSNSと比較すると,広告ARPUで40%程度,アプリARPUでは比較にならないレベルの低い収益に留まっていることがわかる。そのため,会員1人あたりの月売上(ARPU)で約19円と,最大であるGREEの165円と比較すると12%程度となっている。

理由はいくつか考えられるが,大きなポイントとしては以下の3点だろう。

  • Facebook会員は全世界的に成長しており,日本のSNS会員と比較して平均収入がかなり低い
  • Facebookはアプリをオープン化しているが,mixiを除く日本のSNSは自社売上としている
  • 日本のSNSは,90%以上が携帯アクセスであり,PCと比較して会員課金が容易である

 
2) SNSエコシステムにおける収益比較

ここで,さらに巨視的な観点からビジネスモデルを比較するために,それぞれのエコシステム全体に対象を広げて検討してみよう。

Chart2_2

ここでの広告売上は,SNS本体の広告売上に加えて,広告代理店のマージン分を含めたものである。またアプリ売上は前表のアプリ売上に加えて,広告売上に分類していたアフィリエイト広告をオファー広告として計上しなおしたものである。これは詳しく後述したい。

まず,広告売上において差異としてとらえておくべきは,日本のSNSの場合,広告収入の大部分が広告代理店を経由している点だ。なお代理店マージンは一律20%と仮定して算出している。それに対して,Facebookの場合に代理店マージンが入るのはブランド広告のみであり,セルフアド広告マイクロソフト提携広告ではマージンがカットされている。

そしてもう一点,日本のSNSが広告売上として計上しているアフィリエイト広告は,Facebookのオファー広告に相当するが,これは実質的には仮想グッズと同類のものであり,アプリ売上に分類したほうがわかりやすい。そのためモバゲーとGREEの相当売上はアプリ売上の方に移行した。(GREEは広告売上におけるアフィリエイト比率を公開していないが,コンテンツやビシネスモデルが酷似しているため,モバゲーに準じる比率(40%)と仮定した)

アプリ売上は,オファー広告売上会員売上仮想グッズ売上会員フィー売上課金決済料売上)に分類される。(ここで前述のアプリ認証売上はFacebookとSAP間の売上であり,エコシステム全体では相殺されるためカウントしていない) ここで重要なポイントはFacebookエコシステム全体におけるアプリ売上規模をどう見るかだが,ここでは2010年1月に INSIDE NETWORKが発表したInside Virtual Goods調査の仮想グッス市場に基づき,2009年アプリ売上全体を10.3億ドル(927億円),2009年を通したPV数推定からそのうち85%(MySpaceは現時点でのPV比較ではFacebookの10%以下となっている)がFacebookエコシステムによるものとして,927億円×85% = 788億円と仮定した。

ちなみに,2009年アプリ売上の927億円には,Facebookの仮想グッズ・課金決済売上9億円やSAP売上490億円(うち推定で,Zynga250億,Playfish75億,Playdom60億)などが含まれている。

結論としては,Facebookエコシステム全体で見ると,広告ARPUは20円,アプリARPUは26円となり,会員一人あたりから月47円の売上をあげていると推定される。ただしビジネスモデルとして成熟している日本のSNSと比較すると,広告ARPUで1/2程度,アプリARPUで1/3程度に留まっている。会員収入や携帯比率を考慮したとしても,ビジネスモデルが未成熟であることが予想される。逆に言うと,Facebookの収益力にはまだ相当の伸びしろがあるということだ。しかも会員成長率では年間2.7倍と成熟期に入っている日本のSNSを圧倒しており,2010年にどのくらいまで売上を伸ばすか実に興味深いところだ。
 
 
■ Facebookのマネタイズ成熟度を,日本のSNSと比較する

では最後に,Facebookと日本のSNSの収益ドライバーを比較し,それぞれのマネタイズ成熟度とその可能性を探ってみたい。

収益ドライバーの項目としては,広告系を「純広告」「タイアップ広告(=ブランド広告)」「セルフアド広告」とし,アプリ系のうち会員サービス(B2C)を「会員フィー」「仮想グッズ販売(オファー広告含む)」「物販・音楽ダウンロード」,アプリ系のうちSAP向けサービス(B2B)を「課金決済サービス」「アプリ認定サービス」「仮想グッズ提供サービス」(モバゲーのアバター提供など)とした。

またそれぞれの成熟度については,筆者見解で,「成熟」「成長」「着手」「未開拓ないし外部」の4段階で整理してみた。(当チャートも前回記事から若干修正している)

Chart8_2

Chart3
 
 
最後に,各SNSの収益ドライバーに関するポイントをまとめておこう。

  • mixiは広告系が全SNSで最も強い一方,アプリ売上で大きく出遅れている。オープン化によるPV向上をいかに収益につなげるかがポイントだ。
  • GREE最大の強みは会員フィーだ。売上成長率で他を圧倒していたが,ここに来てオープン化の波に押されつつある。今後の展開を注目したい。
  • モバゲーはバランス型だが,直近決算ではアプリ売上を急増させた。V字回復でGREEを急追しており,オープン化がどう業績につながるかをウォッチしたい。
  • Facebookは,会員フィーを除く全ドライバーに着手している。サービス規模と会員成長性では比類するものがなく,今後は業績面でも急拡大が予想される。

 
 
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