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機械と人間の未来(8)ハードウェア革命がもたらす世界

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これまでのものづくりは、製品の企画を行い、製品設計や施策を展開し、資金調達、評価・検証、量産、そして、販売というプロセスでした。こういったものづくりの工程は、工場の建設、高額な設備や機械への投資、資金調達、労働力が必要となる大量生産を前提としたシステムです。

つまり、量産できる採算ライン乗らない製品や、個人ごとにカスタマイズした製品を製造するということは、大企業でも難しく、さらには、スタートアップや組織に属さない個人が作るということは、現実的なものではありませんでした。

リーンハードウェアによるマシン革命

一方、海外では、リーン・スタートアップにハードウェアの要素を組み合わせた「リーンハードウェア」が産業そのものを大きく変えるとして、注目が集まっています(関連記事)。

たとえば、中国・深圳に拠点を置くハードウェアベンチャー向けのアクセラレータプログラム「HAXLR8R(ハクセラレータ)」が発表したリーンハードウェアの資金調達についての資料では、2013年はクラウドファンディングサイト大手Kickstarterだけでをとっても365ものハードウェアプロジェクトが投稿されているとのことです。

「リーンハードウェア」のステップは以下のとおりとなっています。

1、コンセプト
2、最低限の機能を持ったプロトタイプの作成
3、完全な機能を持ったプロトタイプの製作
4、工場での製造のための設計
5、最初の工場での製作
6、小売り

2025年のハードウェアの世界

要注目!2025年までの「ハードウェア革命」のトレンド予測」の記事では、2025年までのハードウェアイノベーションの流れが紹介されてます。

・現在ハードウェア革命は、アーリーアダプター(初期少数採用者)の半分くらいのところ
・2014年には、洗練されたハードウェアプロダクトのプロトタイプを一晩で作れるようになる
・2016年あたりには、ハードウェアのオンデマンド製造が可能になる
・2019年あたりには、販売後のフォロー的な営業活動よりも、事前の営業活動の方が重要となる(ハードウェアにおける予約販売が普通になる)。そのための予約販売プラットフォームも充実している
・2020年、インターネット接続されたデバイスは世界中で800億以上となり、これらのデバイスの50%以上が、新しいハードウェア企業の製品となる
・2025年には、アップルのような革新的なハードウェアメーカーが100以上存在する

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ハードウェアのコラボレーション設計プラットフォーム「Upverter」のインフォグラフ

2016年あたりには、ハードウェアのオンデマンド製造が可能になるとあるように、日本でも数年後には、スタートアップや個人によるオンデマンド型のハードウェアの普及が本格化していく可能性が期待されます。

3Dプリンターの台頭

その背景には3Dプリンターと呼ばれる、市販では10万円以下でも購入可能できるなど低価格化が進み、ものづくりの知識が広くネットで普及し、また、ものづくりのプラットフォームサービスなども提供されるようになるなど、パーソナル・ファブリケーションの動きは確実に進んでいます。

Fabricated The New world of 3D printing(3Dプリンターの10の原則) 」 では、

  1. 複雑さからの開放 (Manufacturing complexity is free)
  2. 種類は無数 (Variety is free)
  3. 組み立て不要 (No assembly required)
  4. リードタイムゼロ (Zero lead time)
  5. デザイン空間の拡張 (Unlimited design space)
  6. 製造のためのスキル不要 (Zero skill manufacturing)
  7. コンパクトで持ち運べる製造 (Compact, portable manufacturing)
  8. 無駄な副産物の削減 (Less waste by-product)
  9. 素材の無限の組み合わせ (Infinite shades of materials) 
  10. 正確な複製 (Precise physical replication)

と示されているように、よりパーソナルでシンプルに使えることが普及の後押しとなるでしょう。

国内の3Dプリンターメーカーでは、スタートアップ企業のボンサイラボ株式会社の軽量コンパクト3Dプリンター「BONSAI Mini BS01」がデザイン性や性能面において高い評価を受けており、医療分野や教育分野などの現場でも活用されています。

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http://www.bonsailab.asia/ 

3Dプリンターは特に、医療分野での注目が高まっています。たとえば、脳外科での頭部を3Dプリンターで軟骨や血管などを再現したモデルを作った手術前のシュミレーション、人口歯(インプラント)治療、薬事承認(製造販売承認)申請をした人工骨の整形皮膚などからの動脈作製、さらには、患者に適した臓器移植作成などの研究も進められており、3Dプリンターが医療分野の治療のあり方を大きく変えていく可能性もありそうです。

3Dプリンターと雇用

3Dプリンターの普及で、製造業や小売業など、雇用のあり方も大きく変えていく可能性があります。身近なものでは、洋服や靴、身近な家具等は自分で作るようになる可能性があります。

米国の12台の3Dプリンターを米国で稼働させている工場では、シフトあたりの労働者がわずか二人で足りているといったように、単純な製造の労働は3Dプリンターに置き換えて行く可能性があるでしょう。

ソフトウェアの技術進展によるハードウェア革命

シリコンバレーでは、Software is eating the world(ソフトウェアが世界を侵食する)と呼ばれているように、ソフトウェア技術の進展は、ハードウェアにも革新を促し、3Dプリンターやロボット、自動運転車など、ソフトウェア技術とハードウエアの融合によるイノベーションが創造されています。

ハードウェアもコモディティ化するようになれば、鍵となるのはソフトウェアや、AIのようなインテリジェンス機能の実装です。ハードウェアがソフトウェアで進化し、知能を持ち行動することになれば、雇用への影響は想定されるものの、大きな産業変革にもつながっていくことでしょう。

 

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