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機械と人間の未来(6)「機械の人間化」と「人間の機械化」

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ロボットに代表されるように、機械に人工知能(AI)が搭載され、感情ロボットや産業用ロボット、自動運転車、2億ページを超えるテキストデータを解析し質問に対して答えを導き出すIBMが開発した人口知能プログラム「ワトソン」など、様々な分野でのイノベーションの可能性が期待されています。

これまでのブログ「機械と人間の未来(1)機械化がもたらす人間の雇用と共存の未来」でも紹介をしてきましたが、機械がより人間に近づき、知的労働者の雇用を脅かし、機械が人間の知能を超える日もそう遠い未来の話ではないのかもしれません。

「機械の人間化」が進み人間の支援や脅威になる一方で、「人間の機械化」、「人間のIT化」の動きも進みつつあります。

身近になりつつあるウェアラブルデバイス

その代表的な動きが、グーグルなどが開発をすすめているメガネ型の情報機器である「グーグル・グラス」など、自分自身がポケットなどに常に身につけて持ち歩くできるウェラブルデバイスがあげられます。

グーグル・グラスには、ディスプレイ、Wi-FIやBlutoohtの無線接続、ストレージ、スピーカー、カメラなどが搭載されており、ウェブ検索のほか、写真やビデオの撮影や再生、メッセージ送受信や通話、ビデオチャット、自動翻訳などの機能が搭載されています。

Pristine」社では、手術などの医療分野での活用するためのアプリ開発を行っています。医療分野だけでなく、農業や教育など人間の生活や業務を支援する様々な分野での活用が期待されます。

矢野経済研究所が2013年8月2日に発表した「スマートグラスとスマートウォッチに関する調査結果 2013」の調査データでは、グーグルの「グーグル・グラス」に代表されるスマートグラスの市場は、2013年の出荷台数の45万台に対して、2016年には1,000万台になると予測するなど、急速な市場成長が予想されています。

そして、韓国サムスン電子などの「キャラクシー・ギア」やソニーの「SmartBand」に代表されるスマートウオッチ市場は、矢野経済研究所の調査によると、2013年は1000万台、2016年には1億台と予測しています。本市場にはアップルなどの参入も予想されており、ヘルスケア分野など今後の成長分野として期待が集まっています。

ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)の可能性

ブレイン・マシン・インターフェース(以下、BMI)への注目も集まっています。BMIとは、脳と機械をつなぐためのインターフェースとなるデバイスや技術です。神経科学分野の進歩に伴い、脳活動と行動との関係性が研究され、実証も始まっています。BMIの活用により、センサー等で収集した脳活動のデータを機械を通じて体外にアウトプットしたり、脳に送られる感覚情報などを機械を通じてインプットするといったことも可能となります。

特に、医療分野での活用が期待されています。たとえば、何らかの障害により手足を動かすことができない患者が、自分のイメージで、ロボットのアームを動かして食事をしたり、パソコンのキーボードを打ち込むといったような研究もされています。

人間の動作を補助・支援する

人間の身体機能を取り戻したり高めたりする「エクソスケルトン」、重いものを持ち運ぶための動作補助ウェア「マッスルスーツ」など、人間の動作を補助・支援するロボット型スーツなどの開発が進んでいます。

国内外で注目が集まっているのが、筑波大学発のベンチャー企業のサイバーダイン社が開発した介護・福祉分野で利用する世界初のサイボーグ型ロボットである装着型ロボットスーツ「HAL」です。

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http://www.cyberdyne.jp/products/HAL/

HALでは、日本が中心となり「日本の生活支援ロボットの国際安全規格( ISO13482 )」を認証し、EUでは、医療機器認定証を取得しています。その背景には、HALを装着し、トレーニングを行うことで、脳卒中などの運動機能障害が回復したといった事例も相次いでいることがあげられます。

サイバーダイン社はHALを通じて「人支援事業」を作り出すことを目指しており、超高齢化と人口減少が進む中、医療・介護をはじめ、様々な分野での活用が期待されています。

これまで、機械が人間に近づき、人間にとって脅威になるというトーンでまとめてきましたが、今回は人間にウェラブルデバイスやブレイン・マシン・インターフェース、そしてロボット型スーツなどを実装し、人間が機械やITを装着することで行動を補助・支援する取り組みを紹介しました。

「機械の人間化」と「人間の機械化」の進展は、これからの人間の生活や働き方など、様々な分野で大きなインパクトをもたらすことになり、新たな産業やビジネスモデルの創発などが期待されるところです。

 

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