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機械と人間の未来(5)インダストリアル・インターネットの世界

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産業機器のネットワーク化がが工場の生産のあり方をも大きく変えようとしています。米ゼネラル・エレクトロニック(以下、GE)は、ニューヨーク州にある敷地面積万8000平方メートル規模のバッテリー製造工場では、フルタイムの従業員はわずか370名で、製造工場の現場にで働く労働者はわずか210名です。製造ラインには、1万箇所以上のセンサーが設置され、そのセンサーから発信される情報を少数のマネージャがiPadで管理を行っています。

GEは、2011年に10億ドルを投資してICT研究所を設立し、エンジニアやアナリストを400人を新たに採用し、産業とのネットとの融合を進めています。GEにはグループに約4200人のソフトウエア技術者が在籍するなど、ハードウェアだけでなく、ソフトウェア分野にも力をいれています。

GEでは2012年11月に産業機器にセンサーを取り付け、センサーからネットワークで経由で稼働データなどを収集し可視化することで、メンテナンスに生かし、効率的な生産管理と生産性の向上を実現する「インダストリアル・インターネット」というコンセプトを発表しています。IoT(Internet of Things)ともコンセプトが近いですが、産業分野にフォーカスしたのが、「インダストリアル・インターネット」と言えそうです。

「インダストリアル・インターネット」は、工場の生産現場だけでなく、ジェットエンジン、医療用機器、発電用タービンなどの、あらゆる機器のデータをネットワークを通じて収集することでシステムの最適化を図ることができます。たとえば、電力やガスなどのインフラ管理や、運行中の航空機のジェットエンジンや燃料などの状況把握など総合的に管理し、円滑なメンテナンスの対応や生産性向上につなげることができます。

海外での先進事例では、風力発電において、天候条件や風向き、風力などのデータをリアルタイムで分析し、その条件に応じてブレードの向きや角度を自動的に調整し、効率的に発電を行っています。日本では、風力発電の再参入をしており、こういった取り組みも進めていく計画となっており、競争優位に立つための一つの強みとなっていくでしょう。

国内では、ヘルスケア事業において、数年前からCTスキャナーの稼働状況を分析し、消耗品のX線の管球の交換時期を予測して、ダウンタイムを減らす取り組みを行っています。

GEはこれらの「インダストリアル・インターネット」を推進するために、クラウドサービスを提供するAWSとの提携や、ビッグデータ分析基盤を手掛ける米Pivotalに出資するなど、ICTとの融合も進め、大規模な産業機器をクラウドで管理し、「GE Predictivy」という予測分析のためのビッグデータプラットフォームの対応を進めています。クラウドサービスで必要なリソースを提供し、ビッグデータのソフトウェアで的確に解析できるといったように、ICTのテクノロジーの進展も大きな後押しをしているといえるでしょう。

国内では2014年4月23日にソフトバンクテレコムとM2Mなどと組み合わせたサービス開発などの提携も発表し、自動車業界や建設業界などへの業界へのアプローチを強化しています。

これらの「インダストリアル・インターネット」コンセプトはGEの先進的なアプローチといえますが、一方で、GE自体の事業の転換を大きく迫られているとも考えられます。

GEのセグメント別の受注高をみると、大きく分けて産業機器の「新規販売」と納入後の交換部品も含む「メンテナンス」で分けられますが、多くのセグメントではメンテナンスが40%を超えており、さらに全社の営業利益では、75%がメンテナンスの収益となっているように、GEの収益の柱はメンテナンス事業となっています。

つまり、これまでは、メンテナンスの領域は、機器を納入してしまえば、遠隔では機能変更もできず、機器の製造元にしかできない安定的な収益を確保できるドル箱となっていました。

しかしながら、今は、ソフトウェア「Machine Apps」で機器のリモートアップデートが可能となり、機器からネットワークを通じて蓄積される運転情報などのビッグデータを活用し、機器の故障余地の検知などを未然に防いだり、機器の故障の原因を特定できるようになっています。

機器メーカなどの熟練技術者の知見などが必要とされていたメンテナンス事業において、ICT企業の新規参入が相次ぎ、その聖域が侵食されようとしています。競争環境が厳しさを増していく中、GEが「インダストリアル・インターネット」を打ち出し、事業への展開を加速させることで、ネットワークにつながる機器は加速度液に増えることで、様々な産業構造の変化やイノベーションが生まれてくることが期待されるところです。

 

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