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「ソーシャルメディア避難訓練」の必要性

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「揺れてる?」「揺れた!」「地震なう」――ひとたび地震が起きると、こんな言葉がツイッター上を駆け巡るというのも珍しいことではなくなりました。いまやマピオンの地図に「地震なう」ツイートが表示されるほどですが、それだけソーシャルメディアの情報伝達力が災害時にも期待されているということでしょう。その可能性をより確かなものにしようということで、こんなアドバイスがHBRのブログで紹介されています:

Twitter and the Temblor (The Conversation – Harvard Business Review)

カナダの政府機関'Public Safety Canada (PS)'が直面した、地震発生時のツイート投稿に関する問題と、そこから得られた教訓について。PSは自然災害やテロなど、大規模災害への備えを促進する役割を負っている機関なのだそうですが、国民に対するメッセージの発信にソーシャルメディアも活用しているとのこと。で、実際に地震が起きてツイッターでツイートしようとしたら、回線がつながらないわフランス語の翻訳者がいないわ(※カナダでは公的な情報発信には英仏両言語を使わなければならないとのこと)で大変なことに……という状況が語られています。

その顛末もなかなか興味深いのですが、ここでは彼らのケースから得られた教訓の部分を要約しておきましょう:

1. 災害時用のソーシャルメディアポリシーを、通常版とは別立てで用意しておくこと

ソーシャルメディアを通じた情報発信をしている企業/組織であれば、もちろんソーシャルメディアポリシーを用意されていると思いますが(ですよね?)、災害時用のポリシーも用意しておいた方が良いとのこと。具体的には承認フローを短くして、緊急時にも迅速な情報発信ができるようにすることが語られていますが、他にもメッセージの内容等についても特別なものが必要になるかもしれません(メディア関係であれば、災害時のみ有料コンテンツの引用も許可するとか)。

2. 組織内のコミュニケーションにも対応すること

対応するチームが常に最新の情報を手にしているように、信頼できるソーシャルメディア・チャンネルの情報を共有しておくべき、とのこと。発信ばかりに頭が回りすぎて、組織全体に最新情報を行き届かせるのがおろそかにならないように、というアドバイスのようです。

3. ハッシュタグを活用すること

これは普段から意識されている方が多いと思いますが、例えば地震情報の発信には"#earthquake"というタグを付けた方が、ツイートの伝達力が格段に変わってくるわけです。またスタンダードなものだけでなく、個々の災害や事件において突発的に出現するハッシュタグ(例:エイヤフィヤトラヨークトル氷河の噴火の件)にも目を光らせておく必要があるでしょう。

4. 定型コンテンツを準備しておくこと

例えば「~時~分に~を震源とする地震が発生しました、念のため津波に注意して下さい」のような定型文があれば、それだけ発信にかかる時間を短縮できるわけですね。また上記1.にも関係してきますが、そういった定型文であれば上司の承認を得なくてもかまわない、といった運用ができると。

5. 重要なリンクには短縮URLを使うこと

例えば地震情報が更新されるサイトなどは決まっているわけですから、主要なものにあらかじめ短縮URLを付けておけば、咄嗟の場合にも使いやすいと。最近は好きな短縮URLを指定できるサービスも多いですから、覚えやすいURLにしておくという工夫もできるわけですね。さらに短縮してあればそれだけメッセージ全体が短くなり、リツイートされやすくなるという効果もあるでしょう。

6. オンラインになれる複数の手段を用意しておくこと

これは容易に想像できますが、災害時には通信手段も破壊されてしまう可能性が高いわけですね。破壊されないまでも、無事だった回線がパンクしてしまうということが考えられます。実際に上記のPSのケースでは、携帯電話が使えず、スターバックスの無線LANからアクセスして事なきを得たというシーンが登場するのですが、そのようにオンラインになるための複数の手段を用意しておくことが重要になります。

7. 繰り返し練習しておくこと

いくら机上の計画があっても、いざという時に実行に移せなければ何の意味もない――ということで、練習をしておくようにというアドバイスが最後に来ています。

以上7つのアドバイスなのですが、最後の「練習すること」という点が一番重要かもしれませんね。皆さんの会社でも、毎年ちゃんと避難訓練を実施されているはず。今年からは、災害時版のソーシャルメディアポリシーを準備して、「ソーシャルメディア避難訓練」も一緒に行うというのはいかがでしょうか。

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