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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

「小林啓倫と一緒に働きたい方はこちら」

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先日も引用しましたが、最近『マーベリック・カンパニー』という本を読みました。その中で、Google がこんな仕掛けを行っていることが紹介されています:

サリバンによれば、グーグルは自社に勤務する一流の科学者とエンジニアの名前を含む検索にも同様に求人広告を表示する。グーグルで働く知名度の高い社員に関心がある人なら、グーグルで働くことにも興味があるのではないか、という理屈だ。

グーグル・マニアな方々にはこれって常識なのかもしれませんが、僕は初耳でした。残念ながら実物は確認できなかった(何人か Google 社員の名前を打ち込めど求人広告は出ず)のですが、面白いアイデアですよね。例えば僕のブログを読んで下さった方が「こいつはどんな奴だろう」と思って検索すると、「小林啓倫と一緒に働きませんか?日立コンサルティングでお待ちしています」などと表示されるような感じでしょうか……(いや、あくまでも例えですのでフザけんなとかいうクレームはご勘弁を)。

しかしこの「人名検索求人広告」が成立するためには、以下の2つの前提が要求されます:

  1. 社員が個人名でも活躍している
  2. それを会社が把握している

「前提」というまでもない当然の話ですが、これって意外と難しいことではないでしょうか。「社員がブログを書くことについて」が大きな議論となることに象徴されるように、日本の企業では普通「社員が個人名で勝負する」ことは例外的な話です。最近は法律による規制が検討されていますが、副業禁止規定が残っている企業も多いですよね。これではとても、個人名から会社をPRしようなどというのは無理な話です。

また仮に副業禁止規定などがなくて、社員が自由に外の世界へ出て行っていたとしても、会社が従来型の人事をしていてはせっかくの活躍を把握できません。ある社員が「会社の中」ではなく「社会の中」でどんな評価を得ているか、理解する以前に把握しようとすらしていないという企業がほとんどでしょう。確かに企業にとっては自社に何をしてくれたかが全て、なのかもしれませんが、何をしてくれる可能性があるか・誰とつながっているか、を理解しておくことも大切なはずです。「人名検索求人広告」は、この「誰とつながっているか」を利用するというアイデアですしね。

いずれにしても、人名検索求人広告が打てる会社というのは、そこに在籍する人々を「社員」ではなく「個人」として見ていると言えるのではないでしょうか。その良し悪しは別にして、自分の会社がこんな検索連動型広告を出せるかどうか、考えてみるのも面白いかもしれません。

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