経済変動の爪痕とクラウドサービスの落とし穴
クリスマスらしくない話題ですが、一昨日(2015/12/22(火))、政府は2016年度の経済見通しについて閣議了解しました。内閣府ホームページに記載されている「平成28年度政府経済見通しの概要」によれば、
平成28年度は、「緊急対策」など各種政策の推進等により、雇用・所得環境が引き続き改善し、経済の好循環が更に進展するとともに、交易条件が緩やかに改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。
とのことで、まぁ、来年は少し景気が回復するであろうということだと思います。回復するなら良いことだと思います。
経済のニュースを見ていたら、今日はITコスト変動費化の話を書きたいと思いました。ある時期までITコストといえば、「ITコスト削減」だったのですが、ある時期から「ITコスト変動費化」という言葉が聞かれるようになりました。ある時期というのは、かなり昔のことのように感じられますが、2007年のサブプライムローン問題に端を発するリーマンショックの後のことです。あのとき、企業の業績は悪化しているのに、ITコストは減らないということに対して疑問を感じた人が多かったと思います。基本的にITコストというのは新規投資よりも既存維持のボリュームが大きくなるので、不況時に新規投資を止めたとしても、思ったほどITコストは減らないようです。
その時期以降、ITコスト変動費化は、特に経済変動の影響を受けやすい業態の企業で重視されています。好況下ではITコストを効果的に使って需要に対応したいが、不況下においては情報システムの利用を制限してITコストを圧縮したいというニーズがあり、そのために、ITコストの変動比率を上げておいて、いざ不況というときにITコストを減らせるようにしておく考え方がITコスト変動費化です。
『それであれば、既存の情報システムをクラウドサービス上に乗せ換えれば、経済変動に合わせて、ITコストを変動させられますよ』というのが、というのが(私も含む)IT業者の謳い文句なのですが、実は、そう簡単にはいきません。企業の情報システム部門は、以下3つのポイントに注意が必要です。
(1) 利用部門の理解を得る
不況時にどのような制限をかけてITコストを圧縮するのかについて予め利用部門の合意を得ておく必要があります。たとえば、利用ID数課金となるクラウドサービスを使っている企業が不況時に利用ID数を減らそうと思ったら、確実に利用部門は反発します。不況時だからこそ積極的に営業展開しようというシーンで、情報システムが不便になると、何のための情報システムなのか?って、怒りたくなりますよね。
(2) 経営層の理解を得る
経済変動に合わせてITコストを圧縮できるとして、どこまで圧縮可能なのかを予め経営層に説明しておく必要があります。急な不況がやってきたとして、そのときにもっと圧縮せよといわれても、あるところ以上は無理なものは無理です。ですから、次年度のIT予算を考える時期(3月決算の企業であればこれからの時期)に、合わせて提示しておくのが良いと思います。
(3) クラウド事業者に確認
リソースを変動したい場合にはどうすれば良いのか、どれくらい時間がかかるのかを、利用しているクラウドサービスそれぞれについて確認して、その情報をどこかに纏めて管理しておくのが良さそうです。全てのクラウドサービスがAWS(Amazon Web Services)のようにボタン一つで瞬時にリソースを変動できるとは限りません。クラウド事業者の営業担当を呼び出して、変更オーダーを出して、と時間がかかるものもあります。
ITコスト変動費化はクラウドサービスを使ったからといってそれだけで実現するものではありません。今日は、それをクラウドサービスの落とし穴として、注意すべき3つのポイントを紹介しました。
【参考文献】
内閣府ホームページ「平成28年度政府経済見通しの概要」(http://www5.cao.go.jp/keizai1/mitoshi/2015/1222mitoshigaiyou.pdf)より