新興国市場が生むイノベーション(その4)
前回に引き続き、新興国市場の安く若い労働力の活用事例を考察します。
新興国市場特性とは、一人あたりGDPが低いことや人口動態からみて若年層が多いことです。外資系企業は、中国市場を世界の組立工場として位置づけ、格安な労働力を活用してきました。
単なる低価格な労働力だけでなく、生産設備投資への代替手段として労働力を捉えることも可能です。例えば中国電池メーカーBYDは、労働力の安さを存分に活かし、最新の生産設備ではなく手作業での生産ラインを構築し低価格製品を実現しました。充電池は簡単な組み立て製品であることに目をつけ、設備ではなく手作業で製造することで、日系メーカーより何十分の一の投資金額に抑えました。製品価格で40%以上の安さを実現したという。(SearchChina News 2002) 翻って考えると生産設備機器さえも先進国市場を前提に製造されています。
人 材採用に関して、未経験の若年層を積極的に採用し育成することで、大規模な技術者数を獲得した事例もあります。インドWiproでは、年間に数万人もの新 卒採用を行い、自社提携大学で教育することで、一人前の技術者に育成します。そもそも自国内の経験豊富なミドル層が少なく、かつ多くのIT企業が技術者を 必要とするため、需要と供給のギャップが存在しました。そこを中途採用よりも新卒採用で育成するアプローチに切り替えることで需給ギャップを埋めました。 ちなみにインドにおいては、20歳代までの人口比が40%近くを占めており、将来の経済成長が見込める若い国です。
鍵はいかにして市場特性を自社の優位性に取り込むかです。新興国市場から、さらなるイノベーションが生まれることを期待しています。