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事業グローバル化における戦略と人はどうあるべきか? そのヒントとなるべき考察と事例集

Googleの事業戦略は存在するのか

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Googleに事業戦略とは存在するのか?

Googleについての記事を見ると、多くは高い株価、革新的サービスの紹介や説明、技術者の20%の時間をコア業務以外に使うなど、多くは技術的、または財務的特徴について述べられています。事業の特徴として、過度の広告事業への依存、つまり全体売上の内、97%が広告事業です。唯一戦略らしき情報としては、経営資源配分ルール(Strategic Resources Allocation Rule)として、70/20/10%が存在するようです。これは全体の資源を100%として、70%を検索、広告、アプリケーション事業、20% をポテンシャル事業、残り10%をとんでもないサービス(”wild and crazy services”)として位置づけています。 (Source; Conference at Innovation @ Google, KM world from CNET March, 2008) つまりGoogleの戦略は、確固たる事業戦略は存在せず、チームや個人の対話から自然発生?的に生まれる事業戦略でしょうか。

経営学者は、このように戦略が存在せず事業運営を行うことで浮かび上がってくる方向性を創発戦略と名づけました。この創発戦略の代表格は、1960年代ホンダの米国市場参入事例が有名です。特に具体的な事業戦略を持たずに米国市場へ参入しました。結果、当初に狙っていた大型バイクではなく、小型バイクを自転車製品のカテゴリに位置づけ、米国市場での大成功を収めたのです。

伝統的な競争戦略の定義では、戦略とは集中と選択であり、何をすべきか、また何をやめるべきかの取捨選択、トレードオフでもあります。ではGoogleの詳細を見てみましょう。

上位の経営理念について、Googleは、自身の使命である、"世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること"を掲げています。この使命(ミッション)は、Googleの存在意義として機能し、力強い指針与えてます。とはいえ、これは使命ではあるが、事業戦略として、”どのようにして整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにするか”としては機能していません。あまりに広すぎるため、どの方法をもって使命を遂行するか、示されていないのです。確かに今までは、個人向けWeb検索サービスを中心に成長を遂げてきましたが、将来もWeb中心なのか、それとも法人にシフトするのか、モバイルに大きく舵をきるか、並存か、大きな戦略は出てないようです。

組織に関して、Googleはチーム型経営による合意に焦点を合わせた強い組織文化が存在します。組織構造は非常にフラットであり、透明性が高いといわれます。(CEOの弁)組織には、数多くの新規サービスのプロジェクトが同時進行で存在し、"Top 100 Priorities"list (100の優先リスト)としてリスト化されてます。技術者は、上司の指示でプロジェクトに配置されるわけではなく、自らが希望して参加します。チームの平均人数は3-4人と小サイズです。フラットな組織構造では、プロジェクト間の調整作業が多く発生しがちですが、おそらく技術者の与えられた自由度により、帳消しにされているのではないでしょうか。

技術者を大切にする創造的文化は、チーム型経営であり、合意を信条とする経営スタイルと高いフィットをもちます。Googleのプロダクトマネージャーは、平均で50以上のレポート先が存在する。(Wall Street Journal、Management a la Google, April 2006) このような多くの関係者が存在する中では、上司の命令や統制などよりも、同僚とのコミュニケーションや評価が大きな役割を果たします。Googleの行動規範である、10の黄金律(以前の投稿)として、一個人ではなく、チームによる判断を求める行動規範にも現れてます。またGoogleにおいてマネージャーとは、意思決定を行うリーダーではなく、プロジェクトチーム間や内の対話を促すファシリテーターと定義されます。

人材について、Googleは技術者を核とした方針を打ち出し、自身の20%の時間を、新規アイディア創出のため使うことが挙げられます。答えるべき人材マネジメント課題は、いかにして技術者がイノベーションを生み出すための人材マネジメントを構築するかです。そのための社員向け無料レストラン、ランドリーサービス、娯楽ルームが存在します。

これらのGoogleの特徴:技術者重視、プロジェクト型フラット組織、イノベーション推進などは、社内のアプリケーションやITシステムが支えています。イントラネット内での、何でも検索エンジンとなる"MOMA"、週間毎の技術者活動報告書”Weekly engineer activity update email”や"Product Snippets"、および次なるアイディアのデータベースとなる"Google Ideas" です。

つまりGoogleは、どの事業や製品群で情報を整理し、アクセスできるようにするかは明言せず、いかにして技術者がイノベーションを生み出せるにような環境作りに腐心しているのです。これはイノベーションとは、マーケッターや事業企画者ではなく、動機付けられた技術者によるものだ、との前提条件を基にしているのでしょう。とはいえ近年の成長の鈍化から、いずれ見直すときがくるのかもしれません。(Wall Street Journal, Google Gears down for tohger time, December, 2008)

おそらくGoogleの懸念とは、このまま技術者重視の体制で良いのかです。成長するベンチャーは、いずれ頭打ちの成熟期を迎えます。まだ成長期とはいえ、Googleは今まで同様に、規律やトップダウン型の統制なしに継続的な成長を遂げられるのでしょうか。引き続き注目していきたい企業です。

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