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夢がなくても人は死なない

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「下流社会」がベストセラーになって有名になった三浦展さんの考えがよく分かる一冊でした。

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夢がなくても人は死なない

まず、前提として、「下流社会」で語られていることは、データを分析した結果であって、「自分らしさを求めるのは下流である」というのは、三浦氏自身の考えではありません。また下流の定義に関しても、

「このままでいいや」「もっと下でもいいや、その方が楽だから」と思う人が下流。「もっと海外旅行がしたい」とか「勉強でもスポーツでもうまくなりたい」とか思わず、ただ単に「面倒臭い」「楽がしたい」「勉強したくない」「働きたくない」と思っているのが下流なんです。(46ページ)

とのことです。

あの番組(NHKの「課外授業ようこそ先輩」)に呼ばれた芸術家や冒険家の方は、黒板に「夢が大切」などと書いたりします。夢を持つのは結構なことですが、毎回、そんな人ばかり教壇に立つと、さすがに辟易としますね。たまには税務署の署長でも呼ぶべきです。この社会に絶対に必要な税金の話をしてもらえよ、と思います。こんな変なマスコミ情報が多いから、子どもは重要なことを見失ってしまう。(52ページ)
あらゆる仕事は、社会的に必要とされているものであり、職業に貴賎はありません。税務署長になりたい、というのも立派な夢だと思います。
食べるだけなら楽にできるわけですから、若い人は自分の能力を高めるとか、人のために働くとか、そういう方向にエネルギーを使ってほしい。今の若者は自分だけの楽しみ、喜びに閉じこもってしまう部分が多いわけで、ささやかでもいいから人に喜ばれることを自分の喜びとして感じるような教育や社会的な仕組みが必要だと思います。(74ページ)
仕事の基本は、他人を喜ばせること。他人を喜ばせることを自分の喜びとして感じることができるようになれば、真っ当な仕事人と言えるようになるでしょう。
俺は賃金相当分しか働かないよ、というのは、ある意味では奴隷の論理だと思う。仕事は罪であるという価値観だ。仕事は上から命令されて嫌々やっているだけなんだから、できるだけ少なくしたいという価値観。これは奴隷の仕事観です。(95ページ)
給料に何となく不満を持っている人も同じような考えだと思います。きちんと社会に価値を実現している自信があれば、独立すればいいだけのことだと思います。組織に依存していながら、都合のいい時だけ個人の権利を主張するのはフェアではないと思います。
働くってことは、好きなことをするのとはちがう。むしろ、会社で働くことは多くの雑務をこなしたり、「バカな上司が多いな」とか「つまらない仕事がいっぱいあるんだ」と知ることに意味があるとすら言える。それは一見無駄な経験に思えるかもしれない。でも、そういう無駄を経験しておいた方が、最終的には自分に幅ができるし、人生面白くなると思う。(130ページ)
無駄なことや雑務も必ず役に立ちます。やってみて初めて無駄だということが分かるのであって、そういう経験を積むことで重要なことに集中できる意識が育まれていくと思います。
「就社」して、あらゆる雑務に関わらざるを得ない状況に身を置くことは、非常に人間を育てる。(161ページ)

今や、隣に住んでいても嫌いな人とはつきあわなくて済むような社会になった。そのため、子どもは嫌な人とつきあう強さや技が身についていない。(中略)ウマの合わない人とはつきあえなくなっているってことが問題。(170ページ)
コミュニケーション能力の低下に注目が集まっていますが、異質なものとのつきあう経験が減った影響だと思われます。同質なものだけのつきあいは心地良いのですが、免疫がなく抵抗力が劣ることになります。

働く上では、身体感覚がすごく大事だと思う。身体でおぼえて、身体が無意識のうちに動くくらいじゃないとプロになれないからね。(194ページ)

キッザニアの住谷社長や「ドラゴン桜」著者の三田氏などとの対談もあり、内容の濃い一冊でした。

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