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人材育成における各ステークホルダー(人事担当者・受講者・マネージャー・講師)の立場から、現在の企業教育での問題を提起し、解決策を処方していきます。特に「KKD(経験・勘・度胸)」で、講師の人や企業研修に疑問を持っている人事担当者・現場マネージャーの人必読です。

ビジネスパーソンのモチベーションアップの条件

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研修を実施しているとよく耳にする言葉があります。
それは、モチベーションが上がらない」というフレーズです。
"モチベーション"というフレーズは普段何気なく使っていますが、そもそも"モチベーション"とは何かということを考えてみたいと思います。

【モチベーションのとは】
モチベーションの意味を聞くと、このような答えが返ってきます。「やる気!」
間違ってはいませんが、少々乱暴な答えのような気がします。
正確に定義をすると、「望むべく姿や客観的事実(目標)に対し、どんな方法や行動をとり、それに向けて行動を起こし、達成するまでやり通すような心理的エネルギー」です。ですから、モチベーションには必ず、何かしらの"目標"が存在しています。モチベーションと目標は切っても切れない関係なのです。つまり、モチベーションを促進させるためには、どのような目標をもつか、どのように目標を立てるかが重要になります。

【成果とモチベーションの関係】
具体的にモチベーションがどのように成果と結びつくかを考えてみましょう。
心理学者のN・R・Fマイヤー(1955)は「成果(業績)=能力×モチベーション」という方程式で表しています。ここで注目したいのは、能力とモチベーションが相乗関係になっていることです。これは何を意味するかというと、ものすごい能力をもっていたとしても、モチベーションがゼロならば、成果(業績)はゼロということです。次に、能力とモチベーションの特徴を考えていくと、能力は身につけるには時間がかかりますが、モチベーションは上にも述べた通り、しっかりとした目標をもてば※1、短時間で高いモチベーションを有することができます。つまり、物理的・時間的な制約があるなかで、成果(業績)をあげるには、いかにモチベーションを高く持つことが重要かということがわかるでしょう。

※1)目標設定がモチベーションに影響を与えるには、様々な要件があります(目標設定理論、社会的認知理論等)。

【ハックマン=オルダムの職務特性理論】
これからは、ビジネスパーソンに焦点を当てモチベーションを促進させるための条件を紹介していきます。ハックマン=オルダムによると、人が仕事においてモチベーションが増進させられるのは、次の3つの状況に置かれたときです。

①有意義感の経験(取り組んでいる仕事が自分の価値観と合致し、意味あるものと感じること)
②責任(行う仕事におい、て実行の責任を自分自身のものとして感じること)
③結果の把握(自分が費やした努力やエネルギーが成果や結果につながっていると具体い的に把握できること)

以上の3点の状況に置かれたらビジネスパーソンはモチベーションが増進します。そのための条件として、次に上げる5つの条件(職務の特性)があります。

①技能多能性
その仕事を行う上で、どれくらい知識や技術が必要とするか。知識や技術の幅が広ければ広いほど、仕事における有意義感は高まる
②仕事一貫性
行っている仕事は、まとまりがあり一貫性があるか。一貫性が高いほど、仕事における有意義感は高まる
③仕事の有意味性
ステークホルダーに対して、自分の仕事がどれくらい影響を及ぼしているか。影響力が高いほど有意義感は高まる
④自律性
仕事の計画や遂行に対して、どの程度裁量があるか。裁量が高いほど、仕事に対する責任感は高まる
⑤仕事からのフィードバック
自分の仕事の進み具合や途中の成果に対して、具体的なフィードバックを得ることができるか。フィードバックが具体的であればあるほど、自分が投入した努力やエネルギーが成果に結びついていることを把握することができる

これら5つの条件が全部満たされていると、非常に高いモチベーションを得ることができます。逆に、5つの条件が満たされていないとモチベーションはかなり低く、成果(業績)は悲惨なものになるでしょう。

【ビジネスパーソンのモチベーションアップの条件】
"モチベーション"というと自己要因と思いがちですが、仕事においては特に、職務の特性のような外部環境もモチベーションの多寡を左右する要件になります。モチベーションが上がらないなと感じたときは、ご自身の仕事の特徴を考えてみて下さい。また、マネージャーの方は、部下の方のモチベーションが上がるように、5つの条件が満たす環境づくりを目指すのはいかがでしょうか?

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