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紛争やチェルノブイリとは全く別の顔を持つ多数の天才的IT技術者を輩出したIT大国、ウクライナの真実の姿に迫る。

ウクライナから見た日本IT業界の課題、展望そして解決法 日本出張 後編

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キエフの某IT企業のオフィス環境

先々週、9月の第2週目に1週間の超過密スケジュールで日本出張してきた筆者ですが、今回日本のIT業界の最新動向を改めて海外より俯瞰することが出来、様々な考えが頭をよぎりました。

一言でいうと「日本、ヤバイな」と感じた瞬間がとても多かったです。日本企業は変わりつつあるし危機感も共有しているのですが、それをどのようにして解決すべきかという点がまだ流動的ではっきりしていない気がしました。英語で「adapt or die」(適応しろ。さもなくば滅びよ)という表現がありますがまさに今の日本に投げかけるぴったりの言葉だと思います。

1:AIやビッグデータ解析の人材を中心にITエンジニアの総数が絶対的に足りていない。慢性的人材不足。日本人エンジニアは覚醒し、稼げるフリーランス、個人事業主を選択し、多重下請け構造を下から切り崩している(とても良いことです)。結果日本人エンジニアの人件費も高騰。デスマが快感と言っているマゾなエンジニアも今はそんなにいないことでしょう。ITが3Kと言う古臭い考えを捨て、今一番イケている職業との意識が浸透すれば優秀な人材が医者や弁護士でなくITに流入するはず(ウクライナのように。今はアメリカもそうです)。今回まるでシリコンバレーのIT企業のようなオフィス内に従業員専用バーがあるIT企業にお邪魔しましたが広大なオフィスのいたるところにビーズクッションが置いてありそこに座ってドヤ顔でプログラミングしている開発者を見て、ここまでしないと今や日本企業はエンジニアを抱えこめないのかと実感しました。(かと言って従業員が机を所狭しと並べる寿司詰めの伝統的劣悪な日本企業様ももちろんありました)

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日本の某IT企業の職場環境(写真はあくまでイメージです)

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カフェ?じゃありません。キエフの某IT企業のオープンスペース

2:海外の人材を日本に誘致しようと国を挙げて頑張っているが極東の言語・文化的に独特な欧米に比べて安月給で労働環境も劣悪な国に来るもの好きは少ない。優秀なITエンジニアは欧米で引く手あまた。今だバブルの時代のジャパンアズナンバーワンの思考で日本に優秀な人材がどんどん出稼ぎに来てくれると思っているお花畑経営者はそのうち現実が見えてくることを期待します。

3:だったらオフショア開発しかないのだが言語的、文化的な壁に阻まれている。その点比較的近い中韓は人件費高騰を続ける。楽天、SB、メルカリなど英語を社内公用語にするほどの抜本的な改革をしたい会社はまれ。しかしマネジメント層に英語を出来る会社が増えているのは一点の希望。

日本IT業界はまず多重下請け構造をなくすことから始めないといけません。これは上記1によって今までうまい汁を吸っていた企業の淘汰が進むと思うので時間の問題かと思います。

CSAJ一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の調査によると日本ではアメリカに比べ、自社開発とパッケージソフトの導入が極端に少なく、受託ソフトウェア開発の割合が非常に大きい産業構造になっています。これはある意味企業ごとにソフトウェアを互換性のないサイロの様に開発する無駄な労力を使い、企業のITコストの不必要な増大を招いています。

同協会の2019年の調査によると日本ではアメリカと比べ、ユーザー側にITエンジニアがいる割合が非常に低いです。(日本24.8%、アメリカ71.5%)これはユーザー側、すなわち発注元のITリテラシーが低いことを意味し、まともに要件定義や最新メソドロジーを使ったプロジェクト推進、アジャイル開発などができないということです。つまり発注元企業がそもそも何をやりたいのか、どういうシステムを構築し、どのようなユーザー体験を与えたいのかという部分が全くわかってないことを意味します。

その他の問題点を挙げると:

既存のレガシーシステムがもともと部署ごとに開発されている経緯があるため、全社横断的なデータ活用ができない。

カスタマイズが過剰でシステム自体がブラックボックスと化している。欧米の様に業務をシステムに合わせるという発想がそもそも皆無。デジタルトランスフォーメーション(DX)の実行のためには業務をシステムに合わせることが必須。現場サイドは抵抗するがこれを経営改革ととらえ、トップダウンで実行しないと企業自体の存続が危うい。

2025年の崖といわれるDXの壁を越えられない場合、年に最大12兆円の経済損失が生じるという試算もあり。

IT人材の不足規模の展望

今後加速度的に日本のIT人材の不足は進行していきます。経済産業省の2019年付けの最新調査によると2019年に人材供給はピークアウトし、その後2030年までにIT人材は59万人不足するというデータがあります。同調査によるとデジタルトランスフォーメーション(DX)に伴い需要の増大するエリア、特にAI人材などの先端IT技術者の不足が著しく2030年までに15万人近く不足するとのことです。

解決法

ここまで書いてきて日本そして日本IT業界のお先は真っ暗かと思いきや、課題を把握している経営者、IT協会の方々、政治家の方が非常に多くおられることが非常に大きな希望です。

1:教育改革、ITとAIリテラシー、そして英語力の向上。ITの世界共通語は日本語でも中国語でもなく、英語です。

2:IT業界そして既存の産業の構造改革。デジタルトランスフォーメーションを進める。

3:欧米の様にオフショア開発できる環境づくりをどんどん整えること。シリコンバレーのIT企業は見かけはアメリカ企業でも開発の大部分はほとんどオフショアという企業も多々あります。

4:ITエンジニアの地位向上、待遇改善、給与増大

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キエフの某IT企業の従業員向けマッサージルーム

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キエフの某IT企業の従業員向けジム、シャワーも完備
以上、ウクライナから日本IT業界への提言でした!!

Ago-ra IT Consultingへのご連絡は下記まで:
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