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ビクトリア・シークレットに学ぶ,女子大生へのソーシャルメディア・プロモーション

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ヴィクトリア・シークレット(Victoria's Secret)は,下着を始め,洋服,水着,コスメ(化粧品)まで展開している米国ブランドだ。特にセクシーなランジェリーブランドとしては世界のトップクラスだろう。

ブレイクしたきっかけはスーパーモデルを使ったランジェリー・ファッション・ショー。現在では世界のセレブやハリウッド女優たちが愛用していることでも有名で,日本でも人気急上昇中だ。

そのVictoria's Secretのウェブサイトは,クリオティの高いコンテンツで構成されたECサイトになっているマウスオーバーすると拡大されたり,クリックするとモデルが着ている服のカラーを変更できたりと,随所に丁寧なつくりこみがされている。ただし,顧客とのエンゲージメントを深めるためのソーシャルな試みはほとんど見当たらない。せいぜいメルマガ配信と購入者に提供されるマイページがあるくらいだ。

ただし例外がある。Victoria's Secret顧客層より若い年代,大学生をメイン・ターゲットとした”PINK”というブランドがそれだ。クオリティは高いがポップ感あふれる親しみやすいデザインの中で,ディスカウントや特典,そしてソーシャルなアプローチを取り混ぜて,PINKブランドを印象づけている。

 
■ 自社ページ (オウンド・メディア)

PINKサイトで最もソーシャルなアプローチが”PINK Nation”だ。メンバーオンリー(会員登録は無料,Facebookユーザーはconnectで接続可能)のオンラインクラブで,ネット購入のインセンティブや特典がある。中に入るとプロモーション・ビデオやコーディネートのお手本など,クオリティの高いインタラクティブ・コンテンツが用意されている。

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“PINK Nation”で特に興味深いのは,”COLLEGIATE SHOWDOWN”というプロモーションだ。ユーザー投票で選ばれた学校を舞台にPINK主催の大規模パーティが行なわれるという企画で,女子大学生のインサイトを巧みに刺激し,クチコミを促進させている。

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予選を勝ち抜いたのは16校,それがトーナメント形式で4回戦まで行なわれる。一発選出ではなく,徐々に勝ち進む形をとり,ユーザーを長期間キープする心憎い演出がされている。参考まで現在は最終戦が行なわれており,West Virginia University29万票,Rutgers27万票で争っている。この獲得票数を見てもわかる通り,約1ヶ月のこのイベントでおそらく大学生数百万人が参加しているだろう。

さらに"Campus Reps"では,全米の大学代表130人の女の子が選ばれるという毎年恒例のコンテストが行なわれている。

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彼女たちは,このようなコンテストで得票するために,自らFacebookやTwitterをフル活用し,投票を依頼しているはずだ。この手のコンテストは最も効果的なソーシャルメディア活用法のひとつと言える。

さらに多くの大学向けに壁紙まで用意する小技もあわせて,愛校心を刺激しつつ,女子大生の動員を促進している。

Vspinkcom

■ Facebook

Facebookのファンページも充実している。Victoria's Secret本体では322万人,PINKでも234万人ものファンがついており,企業としては最大級の規模だ。ユーザーは動画や写真を観たり,クイズで遊んでみたり,リアル店舗で使えるクーポンを印刷することが可能だ。”The Scoop”というページからは,前述のPINK Nationと連係している他,PINKの携帯用壁紙なども用意されている。

ユーザーからの投稿も活発だ。写真投稿数は1600枚超,ディスカッションボードは1426件ものトピックがたち,ユーザー同士が活発に交流している。動画もCMなどがアップされている他,ユーザー投稿のものもあり,リッチメディアの情報ハブとしてしっかり活用されている。

Facebook1

 
■ Twitter

ツイッターも活用している。@VSPINKのアカウントのフォロワー数は13000人超。ターゲットユーザである女子大生と積極的にコミュニケー ションをとっている。ちなみに参考記事によると,昨年末時点でインターンの女子大生2名が「中の人」 で,キャンペーン情報の告知や,個別にくるユーザからの質問などにも同じ目線で丁寧に答えている。ユーザから投げかけられるキャンペーンのアイディアな どに対しても,「素敵なアイディアね!」といった形で積極的にコミュニケーションをとる姿勢がうかがえる。

Twitter1



■ PINK Mobile

モバイルサイトもソーシャルな場になっているようだ。米国では携帯専用サイトを用意している企業はまだ少ない中,PINKのモバイルサイトはとても充実しており,インタラクティブなサイトになっているようだ。女子大生という明確なターゲットを考えると,モバイルサイトの存在は重要だろう。
 
  
【翻訳協力】
当記事は,噂のTechDoll,三橋ゆか里さん(プロフィール)に翻訳等でご協力いただいています。

 

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