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予測できないITの行く先を、あちこち歩きながら考えてみます

IPv4のアドレスが枯渇する時期が近づいているらしい

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JPNIC(社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター)が先週、「IPv4アドレス枯渇に向けた提言」を公開しました。PDFで5MBに達する大作です。

この文書の最初に出てくるのが、IPv4のアドレスがいつ枯渇するのかについて。海外のIPアドレスの枯渇に関するいくつかの論文を参照し、いずれも数年以内(ばらつきがあるが、2013年~2029年)に枯渇するとしていますし、日本国内やアジアにおいても、そう遠くない将来に枯渇するとしています。(ざっと読んだ限りでは、明確に「いつ枯渇する」という予測はありませんでした)。

また、枯渇の時期にはIPアドレスを取引する「ブラックマーケット」まで登場するのではないかとの予測も。

そして提言の核といえるべきフレーズが下記になります。

IPv4 アドレスの枯渇に向けて,インターネットに関わる者は、特にIPv6 インターネットへの対応を検討・実施することが急務であると考えられる。今後、ユーザに向けて何らかの新しいサービスを提供する場合は、IPv4 を基盤としたインターネット上のみで提供されるのではなく、IPv6 を基盤としたインターネット上でも提供するべきである。

IPv4のアドレスが枯渇し、IPv6へ以降すべきという議論は、これまで何度も繰り返されてきました。理想的には、IPv6の魅力的なサービスが登場することで市場が自然にIPv6へ移行していくことがもっとも良いシナリオで、多くの人がそのシナリオのためにIPv6のキラーアプリの開発にチャレンジしてきました。

しかし現実には、キラーアプリはまだ登場していません。個人的にはこれからも難しいのではないか、と思っています。

となれば、市場原理以外のなんらかの力、ガバナンスなのかコンセンサスなのか分かりませんが、そういった弱い強制力ともいえる力によって、IPv6への移行、つまり機器やハードウェアへの投資を、程度の差こそあれネット参加者のほぼ全員にお願いして移行していかなければならないかもしれません。

例えば、NTTドコモが自社で抱えるサービスですら、MovaからFomaに切り替えるのに非常に苦労したようです。それを考えると、数多くの利害関係者が交錯するインターネットでIPv6へ移行することは、本当にアドレスの枯渇が少しずつ現実となって追いつめられない限り、なかなか難しいのではないかと、ちょっと悲観的に思っています。

とはいえ、時期を別にすれば、IPv4のアドレスが枯渇することそのものに疑いをもつ人はあまりいないはず。いつか必ずくるIPv6のために、こっそりいまからIPv6についてせっせと勉強しておく、というのは、ITエンジニアのスキルとしては面白い作戦かもしれませんね。

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