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ライブドアのデザインがYahoo!と似ている件について

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ライブドアの新サービス「Livedoor Knowledge」が米Yahooの「Yahoo! Answers」のデザインとあまりに似ていることが引き金となって、それを指摘したBroadBand Watch編集部のブログ「そのデザインは誰のもの?」や、ITmediaニュース「ネットサービス“そっくりさん”登場のなぜ」が話題になっています。私もWebサイトを運営する1人としてこの議論の行方はとても興味を持っています。

ITmediaニュースには、ライブドアに真似された側のミクシィやヤフーのコメントが載っていますが、どちらも「真似されて憤慨している」といったはっきりしたコメントはなく、微妙な反応です。個人的には「これだけ似ていればハッキリした文句の1つでも言ったほうがいいのではないか」と思いますが、一方でこうした反応をせざるを得ない状況というのも理解できます。

Webデザインには金銭的価値が込められている

6年前に私が@ITのWebデザインをしたときには(私にとってはじめてのWebサイト構築だったこともあり)、コンサルタントに依頼してユーザビリティテストをしました。匿名で募集した何人かのユーザーに、コンサルタントが作成したシナリオに沿ってプロトタイプの@ITを操作してもらい、デザインやユーザビリティを評価してもらうのです。100万円以上のコストがかかりました。

Webデザインは、見た目の格好良さとユーザビリティの両方を実現する大事な要素です。企業が真剣に開発したWebサイトであれば、そのために少なからぬ投資がデザインに対しても行われているはずです。気軽にコピーしていいものではないことは明らかです。

利用者から見たユーザビリティの価値

しかし一方で、似たようなサービスなら似たようなユーザビリティを実現してくれたほうが、利用者の視点からは便利だという側面もあります。例えば、Windowsアプリケーションならば、上部にはメニューがあって右側にはスクロールバーがあるように。SNSやQ&Aコミュニティなら、別の企業が運営していても、操作法は似ていてほしいと利用者が思うのは自然なことでしょう。このことは、ITmediaニュースの記事の中でもそうした事情について触れていますが、その通りだと思います。

そのために、同一ジャンル内のほかのサイトとあえてユーザビリティを似せる。その方がジャンル全体が成長する。といった考え方をする企業があってもおかしくありません。オリジナリティだけが善、とは割り切れない難しいところがあります。

真似した相手は過ちを認めてくれるか

しかしミクシィやYahoo!がはっきりしたコメントを出しにくいのは、真似した相手を非難しても得られるものが少ない、という現実的な面が最も大きいのだと想像します(米Yahoo!のサービスだという事情もあると思いますけれど)。

例えばもし、Yahoo!がライブドアに対して「デザインが似ているから変えてほしい」と要望したとします。ライブドアが「そうですね、すいません」と認めてくれればいいのですが、「たまたま似てしまっただけだ」とか「いやそんなに似てるとは思えない」となったらどうでしょう。「そうですか、たまたまですか」と、相手の主張を認める訳にもいかないでしょうから、裁判などにエスカレーションせざるを得ません。そうなれば、かなりの手間や時間やお金がかかります。

変化の速いWebの世界で、そうまでして決着つけたいと思う企業は恐らくほとんどないでしょう。

ユーザーの意見こそ頼り

そうした大人の事情もあり、Webページのデザインについて企業がほかの企業に対して「似ている」と非難するのはなかなか難しいところがあるのでしょう。

しかし、よりよいデザインのために投資し、改善する人がいてこそWebの進化があるはずですし、そうした人や企業にリスペクトが集まってほしいし、ビジネスとしても支持されるようになってほしいと思います。そしてそういう雰囲気を作るには、やはりユーザーや読者の声がいちばん重要です。

今回の件をとりあげた2つの記事は、そうした議論をひきおこした点でとてもいい材料を提供していると思いますし、いろんな人の反応を私も注目したいと思います。

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