ヘッドハンティングされた人材に学ぶ"お酒の場での行動"
ヘッドハンティングを進める過程において、私たちが直接ターゲットとなる人材と、お酒を酌み交わす場は多い。ハンティングの話がきっかけで、お互い意気投合し、お酒の場に至るケースだけではなく、中には顧客からの依頼で、その方の人間性を見極めるための参考として、お酒の場を用意することもある。
酒が入ると人は素の自分が出てくるもの。親しい友人との"飲み会"では羽目を外すこともある。しかし、ビジネスの付き合いの中での"会食"の席は別。いくらお酒がはいるとはいえ、友人との飲み会ではない。羽目を外しすぎると後々のビジネスにも影響してしまうこともある。せっかく得た"会食"の席。お酒を楽しむことを通して、より一層のお互いの信頼感を高めるような場としたいものだ。
業界内で評判が良く、仕事で成果を出しているような方は、まさにヘッドハンティングのターゲット人材。彼らと、お酒を酌み交わすと、「私たちの見極めに間違いはなかった!」そんな気持ちが強まってくる。私たちは一緒に仕事をしたことがない人をヘッドハンティングする。しかし、お酒の場を通して、普段の仕事の様子が垣間見えてくることがある。
彼らに共通する行動は、どのようなところだろうか。これを真似るによって、日常の"会食"の席においても相手に好印象を与えることが出来るのではないだろうか。私なりに整理してみた。一部を紹介したい。
【注文の際】
◆自分の食べたいものよりも相手の食べたいものを配慮できる。(年齢や出身地などに合わせ)
◆話に集中できるようなものを注文している。(骨が多い魚類や甲殻類など食辛いものは避ける)
◆上膳、下膳の際などにおいて、店のスタッフにお礼をし、気遣いをもって接している。
【とりわけ】
◆男女が混ざる場では、お酒は男性、食事は女性が取り分けるよう自然に誘導する。
◆飲み物がグラスに残りがわずかになったら相手に確認の上で注ぐ。
【食べ方】
◆相手の前を横切って食べ物を取ることは避ける。
◆残したものは見苦しくないように皿の上でまとめている。
【会計時】
◆自分が会計するときは、頃合いを見計らって相手に気づかれないように支払う。
◆レジで相手が会計をしてくれているときは、先に店を出る。
細かいところを上げるときりがない。しかし大切なのはマナーよりも相手への気遣い。マナーを気にし過ぎて場を楽しめないということは避けたい。しかし、友人との飲み会の場であったとしても、多少の気遣いは必要だ。お酒の場では会話の中身よりも態度のほうが印象として心に残りやすい。
さて、会話の中身についてであるが、
◆今の会社の愚痴は言わない
◆顧客名やプロジェクト名などの固有名詞は言わない
ということには徹したい。酒が入ると愚痴っぽくなる人がよくいるが、現職の愚痴は誰しも気持ち良いものではない。「新しい職場においても、酒の席で仕事の愚痴を人にこぼすのだろうな...」と感じてしまう。また、店内には誰がいるか分からない。仕事に関わる固有名詞を、こういう場では話すことは避けたい。
一方で、ヘッドハントの対象となるような方は話の幅が広い。世の中における関心が高く、様々な情報収集にも余念がないためだ。経済、趣味、家族の話など。相手によって話を深めることができる。
私が扱う経営層のハンティング案件において、依頼主と候補者との会食は、「ケミストリーを見る」とよく言う。相性(ケミストリー)が合うかどうかの見極める場としてお酒の席が利用されている。経営層のハンティング案件ともなると、スキル的なマッチングよりもお互いの相性のほうが重要視されているようだ。
これまでに書かせてもらった行動により、「ケミストリーもばっちり。わが社に是非必要な人材だ!」と、彼らは自然に相手に思わせている。多少のスキルに不安があったとしても、会食の席での行動によって、結果として相手に信頼感を与え、採用に至ったケースもあるくらいだ。
最後に何故、ヘッドハンティングされる人材の行動は洗練されているのかを考えてみたい。そもそもヘッドハンティングのターゲットとなる人材は、「いろいろな人の評判を聞きつけて」私たちの耳に入ることが多い。普段からの行動に関して周囲からの評判が
良ければ仕事もうまくいきやすい。結果としてヘッドハントのお声もかかってくる。つまりは、彼らの行動を真似ていれば、自然に周囲の評判もあがり、そのうちヘッドハントされることがあるかもしれない。(高橋 啓)