ヘッドハンティングする時の情報源は何?
ヘッドハンティングで初めてお会いするターゲットの方から必ず聞かれることがある。
「誰から自分のことを聞いたのか?」
という疑問?である。ヘッドハンティグするにあたってターゲットの方を特定するパターンは大きく2つに分かれており、そのうちのいずれかだという話はしている。その2つのパターンとは、
1.依頼主が求めるターゲット像を元に、ヘッドハンターが人を介した評判等から候補者を絞り込んだ場合
2.依頼主が名指しでターゲットを指名しており、直に本人へ声をかけている場合
このいずれかである。7割~8割位はひとつ目の"人を介した評判を元にたどり着いた場合"なのだが、実はかなりの時間と人を介しターゲットの方に行き当たっているので、一言ではその情報源はお伝えし難いというが実情である。また、ふたつ目の"依頼主が名指しでターゲットの方を指定している場合"は、実はその依頼主がターゲットの方と同業である場合が多く、その為に当初は社名さえ明かすことが難しいのだ。特に後者はターゲットの方からすれば、「どこの企業が自分を指名してくれたのだろうか?」と興味津々であろうが、初回の面談ではそれは明かさないことがほとんどである。
では、指名でヘッドハンティングを依頼する企業は、どうやって候補者をピックアップしているのだろうか?代表的なのものとしては、
「同業界のおつき合いの中から優秀な方と見初められる」
「取引先のコンペで競合する度に、負けてしまう優秀な営業マン」
「取引先の△△さんを自社に招き入れたい」
というように業界団体でお会いしている方であったり、過去におつき合いがある取引先の社員であったりと名前が分かっている場合である。次に多いのは、
「名前はわからないが、××会社で●●(商品名)の開発をした人材に会いたい」
「あの会社の営業責任者が欲しい」
という固有の人材までは判明しているが名前までは分からないという場合。この場合は我々が人物名を特定することになる。また、特に個人名まで分かっている場合などは、だったら自社で声をかけたら良いのでは?と思われるかもしれないが、以下の理由でためらっている場合がある。
「技術的には欲しいが、人柄が当社に合うだろうか?」
「転職の意思はあるだろうか?」
「年収はいくらだろうか?」
「こちらから声をかけて、やっぱり違ったという訳にはいかないよな・・・?」
「駄目だった場合、現職会社との関係に悪影響がでるのではないか・・・」
そこで、我々ヘッドハンターが代理人としてスカウト活動を行うことになる。依頼主がピックアップしたターゲットの方へと我々が接触して、「まずは情報交換を」という話から、本当にその方がターゲット人材か?転籍可能性があるか?を確認していく。当然、転職希望者ではないので最初から可能性が高い方はほぼいない。
そんな中ででも、転職という大きな決断をするターゲットの方がいるのは何故か?
その理由は、ズバリ、現在の会社員には企業ロイヤリティ(会社への忠誠心)が低い人が多いということにある。但し、日本の会社員はメンバーロイヤリティー(一緒に働いている方に対するロイヤリティー)は非常に高い。昨今の会社員の企業ロイヤリティが低い理由は、国際競争や事業環境の変化が激しく、例えば大手メーカーでさえ業績不振になればリストラを行う時代に、現職の会社が家族を含めた自身のことを生涯守ってくれるとは思ってはいないと言い替えられる。つまり、将来の自分や家族を守るのは会社ではなく自分自身のキャリアであることを理解している方は、積極的に我々の話に聞く耳を持ってくれる。
我々が声をかける対象は30代後半から40代がほとんどであり、昨今の日本の年金政策の行方を考えると70歳近くまでは働き続けなければ自分や家族を守れないという使命感(悲壮感?)を持っている世代だ。
現に労働政策研究・研修機構の『データブック国際労働比較2013』によると、世界における日本人の現役引退の適齢意識は高く、60歳以下で引退しようなどという人は8%も満たない。"これからの日本、職業人生は長い"、そう思う人が圧倒的に多いのではないだろうか。ヘッドハンティングされて移籍する人材は、そういう意味でも長期的な自分のキャリアプランを熟考して決断を下す人が多い。ここで言うキャリアとは、生涯年収や裁量権、経営に携われる機会などである。
今の会社で一生働き続けたら生涯年収はいくらなのか?や企業年金制度や退職金は?とか将来、経営に携われる可能性がどのくらいあるのか?などを"現職に留まること" VS "ヘッドハンティング元の企業へ転職すること"を真剣に比較検討して結論を出し、それが現職であればそれはそれで良いことであり、それが他社であればそれも良いことだと捉えているように思える。
我々ヘッドハンターは、ある企業からあなたと話をしたいという使命を預かって、ある日突然、人生のもうもうひとつの選択肢を運んでくる。最初は明かせない情報も多いから懐疑的な心境になるのは察するに十分だが、最終的に選ぶのはターゲットの方ご自
身だから話を聞く分なら損はないだろう。いや、自身の未来や守るべきご自分の家族への責任として、現職キャリア以外の選択肢を検討することは絶対に必要ではないだろうか?ひたすらに現職で頑張れば会社が家族も含め守ってくれる時代ではない。ご自身や家族を守るのは自身のキャリアだと思う。 (楠田 正司)