北斎の版画原図集を大英博物館が購入 『万物絵本大全図』で見る「流離王雷死」
»
これは素晴らしい!! 北斎の絵も、高橋さんの解説も。落雷の瞬間をこういう表現にするセンス、爆発の瞬間の衣服の回転するめくられ方など、まことに驚異的。これを今の僕と同じ年齢で描いたというのも想像を絶する。大英博ないし通信社のコメントへの高橋さんのコメントの凄さは、できれば反映されるといいですけどね。
■葛飾北斎の版画原図集を大英博物館が購入!
『万物絵本大全図』で見る「流離王雷死」
博物館が購入した『万物絵本大全図』は葛飾北斎の浮世絵版下画(版木彫りのための原画)を木箱に収めたもの。
木箱の蓋には「葛飾前北斎・為一老人画」とあり、為一(りつ)は娘の応為(王位)の別名なんじゃないかなとはタカハシの当て推量。
先週出た通信社ベースのプレスリリースは、専門家のコメントも確認してないし、そもそも大英博物館のプレスリリースをネットニュース程度で(おそらく孫引き)してる曖昧なもの。
共同通信社の配信を日刊スポーツとかが引いてるんだけど、「流離王雷死」とタイトルがあるにもかかわらず「何者かが雷に打たれる様子」など、極めてインテリジェンスの低い記事に驚かされる。
これは通信社、スポーツ紙、どちらの教養または取材力が問題なのか?
和名「流離王」とは古代インドのコーサラ国の王ヴィドゥーダバ(Viḍūḍabha)、毘瑠璃=ビルリ、琉璃・瑠璃=ルリ王などとも呼ばれている。
紀元前5世紀頃、瑠璃王は属領化していた釈迦族の地を攻めて一族を殲滅する。
その暴挙に釈迦は「あの者はやがて天に裁かれるだろう」と予言し、その後、瑠璃王は沐浴している時に落ちた雷に撃たれて死ぬ。
北斎は、この様子を描いているのだ。
湖面に落ちた雷撃に感電する瑠璃王を包み込む光、その集中線。現代のマンガにも通ずる。
もう一枚、気になる原図がある。
鄭芝龍(ていしりゅう)の砲術という題の図。
鄭芝龍は中国明代の海賊にして英雄で、鄭成功の父であり、日本人田川七左衛門の父でもある。
この大筒、カッコいいですよね。
晩年、作画のスピードが落ちた(と言っても普通の絵師の数倍を描いたとされる北斎だ)画狂老人だが、まだまだ伝説の英雄を描けるほどにパワフルだったということか。
この原図から版木を起こしなおしてみようと思う、彫り師、摺師がいたら面白いな。
もしかして江戸時代にもう刷られてたかしら?
北斎美術館にコメント求めたい。
SpecialPR