大武ユキ『フットボールネーション』小学館
»
「日本マンガ学会」のスポーツマンガ特集で扱ったサッカーマンガですが、日本のサッカー練習の世界との違いを扱っていて、それが非常に面白い。たとえば、日本のサッカー選手の体形は、もも前を使った低重心の走りや構えでできていてごつごつした感じだが、なぜ海外選手はもっとしゅっとしていて、軽々と動いて見えるのか。日本人はもも前を使っているからだ、という。もも前の筋肉は止まるために使うことが多く、自然に前に出るためにはもも裏の筋肉を使う。また、いわゆるインナーマッスルで重心を安定させて動けば、当たっても強く、目線を高くできる。高い重心で素早く動ける。日本型だと力強くみえるし練習してるようにもみえるが、反応が遅く動きに対応できない。何よりも、広い空間を認識する広い認識ができず、狭いフォーカスした視野になってしまう。もちろん、それがふつうの世界でやっていれば、それなりに通用するので気づかない、というような、運動理論が正確な人体描写で描かれ、まことに興味深い。それに、ここでいわれてることのほとんどは、僕らが八卦掌で練習していることと、同じである。じっさい、意識してみると僕はもも裏で歩いており、視野の広さを確保するため首を立てている。「居つく」などの言葉を使っているのは、おそらく古武道系の考えも取り入れているのだろうが、それにしてもこんな理屈っぽくて「熱さ」のないサッカーマンガが売れているというのも驚きだ。
SpecialPR