「漱石財団」報道 小学館「週刊ポスト」8月7日号
「スクープ★ワイド 夏目漱石 突然の「財団設立」を巡って孫と曾孫が泥沼骨肉バトル」
こうした見出しは大抵デスクが付けるのだと思いますが、たぶん、どこかでこうしたフレームでやりたがるだろうとは思っていました。中の記事は、それほど過激なものではなく、商標権、肖像権などについて弁護士の意見も聞いてまとめているので、内容的にはほぼ問題はないです。ただ、この問題を「夏目家の内紛」というゴシップでのみ報道されると、ことの本質がボヤけてしまいます。この件についてはやはり(同じマスコミの人間としてわからんではないものの)ここで触れておこうと思いました。
私としては、(少なくとも現時点では)この問題は「夏目家の内紛」的なゴシップとしてではなく、知的財産権を巡る状況の変化を背景にした権利と社会共有のバランス、それをどう考えるかという公的な問題としての報道が望ましいと思っています。その観点からの社会的コンセンサスをある程度作ってゆければ、たとえば財団を安易に作ることで起きる混乱を抑制することにもつながると考えるからです。
もちろん、報道は自由になされるべきで、ポスト誌の報道にも感謝しています。が、一方で報道の社会的責任はこうした知財問題に関しても大きいと思いますので、個人的な見解として公表しておきたいと思います。
(註) →ブログ記事「夏目漱石財団なるものについて」
http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2009/07/post-25af.html
なお、記事中私のコメントとして以下のような部分があります。
〈4月に立ち上げておいて、なぜいままで一言も知らせないのか。そもそも人格権や肖像権についても、法的に確立された権利ではない。/ もしそれらを相続するとしても、それは親族全員で相続するはずで、一部の者が占有するのはおかしいでしょう。このままにしておけば、仮に誰かが漱石に関するものを撮影してブログなどに載せて、いきなり『財団法人 夏目漱石』から“肖像権を利用した”として請求書が届いたら、法律に疎い方なら、払う必要もないのにお金を振り込んでしまうのではないか〉
大筋、私の発言を元にしていますが、おそらく記事化の段階で内紛ゴシップ方向に引っ張られた文章になったものと思います。まるで、先に相談されて、こちらにも利益があれば話に乗ったかのような印象がありますが、事実は根本的に意見が異なっています。
現時点で私が自分の発言として赤入れするとすれば、
〈本来相続されない人格権のような諸権利、法的に明確ではない肖像権などの文言を使って、あたかも権利があるかのような目的を掲げた財団を、親族全員の同意以前に設立すること自体おかしい。なぜ他親族の同意なく設立したのか、不明瞭な権利をどう考え、どう管理運営するつもりなのかが知りたいですね。私は漱石をできるだけ自由に利用できる文化として考えたいので、財団設立にも目的にも反対します〉
まあ、これじゃ面白くないでしょうね、週刊誌としちゃ(笑