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夏目房之介の「で?」

八王子市夢美術館の林静一展と『夢枕』

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今度、八王子市夢美術館の「林静一 叙情の世界 1967-2007」展にあわせ、林静一さんと12月16日(日)にトークショーをやるわけですが、そのテーマが林さんの依頼で最新刊『夢枕』(PARCO出版)なんですね。
もともとはビッグゴールドに92~93年連載されたマンガで、そのときはセル画で描かれてたと思いますが、今回ひさびさの刊行は全部CGで作られてます。
林さんは、もちろん60年代後半期のマンガ革命の重要な一翼を担ったマンガ家としても、その後の美人画家としても大好きな人なので、もうそれだけで良くて、どっちかつうとファンとしてすげー嬉しいんですが、問題はこの『夢枕』。
内容は、旅をしてる画家が山に迷い込んで時空を越え、怪しい美女に接待され、河童に会い、そのあいだに近代絵画と東洋の伝統絵画についての議論が並行するという話。顔を最後まで見せないで描かれる女性は、主人公が露天風呂に入っていると、あとから入ってきたりする。そう、漱石の『草枕』と泉鏡花を合わせたような話なんである。

もうあと一週間というところで、ようやく本が届き、こりゃ『草枕』読んどいたほうがいいかなと思ったけど、間に合わないかもしれない。それでなくても、この本での議論はかなり難しい。大体が林さんの知識は半端じゃないのである。たとえば、

〈『草枕』は、その[伝統と西洋絵画の]対立の文脈から文人画を救い出す意図があったともとれる。またそれは、文人画を最前線として再評価する結果ともなっている。[略]その[漱石の]絵画論は、当時、西欧で始まった新しい絵画(フォービズムや表現主義)等の写生を離れ、自立した線によって形を構成してゆく共通性を持っていた。(同書 38~39p)

とか・・・・。こういう議論についていけるほど、僕には教養がないので、まぁついてくしか仕方がないな。
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