『開運なんでも鑑定団』
昔から観てて、最近は日曜の昼にたまたま観られるときに観ている。
23日は後半しか観てないが、生麦事件に参加した海江田信義のひ孫の女性が、勝海舟、伊藤博文、山岡鉄舟、三条実美、山県有朋らの書状を配した屏風を鑑定してもらっていた。結果は300万円。海舟が100万、実美は20万。鉄舟も低かった。その直前に西郷の書と称して200万を主張した人の軸が、西郷のものではなくて千円だったので、対照的で面白かった。でも、無名かもしれないが、けっこう面白い書に見えたけどね。
書としては、海舟はまあヘタではないが「どうでぇ、へへっ」っていう感じのあるカッコマンな書で、けして良くはない。西郷の書もうまくはないが、何かどろどろしたものを感じる回転の効いた面白さがある(屏風にはなかったが)。鉄舟の書は、なかなか枯れた味わいのあるもので、この人はホントに名利に興味のない恬淡とした人だったのかな、と思う。ちなみに幕末三舟とよばれるもう一人の泥舟の書は、まるでナナフシや枯れ枝のようなぽきぽきした書で、面白く、人気があるらしい。(石川九楊編「書の宇宙24 書の近代の可能性」参照)
ただ、今回の書状などを見ると、また印象は違う。三条はさすがに公家だけあって、うまいものだ。連綿のリズムの美学がある。勝も、書状のせいか、いやらしさがないように見えた。事実、維新前の命のやりとりをしてたとおぼしい時期の書を一度、新潟の豪農の記念館で見たことがあるけど、それは迫力のある切実さを感じるものだった。ちら見しただけだしTV画面だけど、今回の書状では鉄舟が味がある気がしたな。
面白かったのは、明治政府の中心部にいた海江田のひ孫の女性だった。クラブか何かのママとして成功し、その後不動産で失敗。12億の借金を抱えて再起して、今は女性社長らしい。たしかに、明治の要人の孫という印象ではないが、何となく幕末を走りぬけた人々の印象でいえば、そのほうがふさわしいような感じがする。面白そうな人だった。
ちなみにキミさんのお父さんは、幕末三舟の書を軸でそれぞれもっていて、中の一つにはキミさんのご幼少のみぎりのいたずら書きがある。かなりボロボロだが、本物ならそれなりのものだろう。ただ、けっこうニセモノも多いらしいので、どうだかわからない。千円か数十万か・・・・。キミさん、鑑定団に手紙出せばいいのに。
もひとつちなみに、幕末の、この屏風に書状を寄せているような人が陰謀をめぐらし、夜陰に乗じて走り、きったはったの中にいた頃、夏目家は早稲田の名主で、娘は夜があける前に舟にのって川を下り、芝居見物をしたり、当主(漱石の実父)は吉原に夜具を積ませるような遊びもやっていたという。
一方、母方の三田家は、曽祖父(奇人収集家三田平凡寺の父)が奥沢の百姓だったのを、高輪に出て山師をやり、一代で材木商「三田源」を築いていた。まさに、西郷らの意を受けた攘夷浪士たちが三田の島津屋敷から市中に入って押し込みを働き、火を放つなど後方かく乱をして再び島津邸から海に逃げ(いってみれば連合赤軍など過激派と同じことやってた)、また品川方面からの打ちこわしという民衆叛乱がおこる中で、材木商で財をなしたわけだから、こりゃ相当面白い話があったのではないかと思う。残念ながら僕は聞いてないけど。
考えてみれば、高輪から江戸を出て最初の宿は品川。しかも幕末とくればジョージ秋山『流浪雲』の舞台だよねー。流浪雲は流通業者だから、三田源と関係あったに違いないんだけどなー(笑