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「使いやすく」「ハマる」技術とは! それは・・・

テクノロジーの進化『楽器:シンセサイザー(Synthesizer)』から見る操作性を考える。そこからビジネスの何が見えるか。

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操作性を追求する最先端の一種として楽器がある。
その楽器の中でもITに関する進化の過程が分かりやすいシンセサイザーに関して、機能と操作性について考察してみたい。

シンセサイザーは1960年代から現在の約50年弱の間に以下の流れが起きている。
1.新技術の実用化
2.さらなる実用化に向けた技術的発展とスモール化
3.機能強化と拡張性
4.操作性の追求

1960~1970年代の代表的シンセサイザーは「MoogSynthsizer」に代表されるモジュラー式アナログ・シンセサイザーである。
Moog
MoogSynthsizer
これは、発音、増幅、変調、制御等、機能ごとのモジュラー間をケーブルで繋いでいく、非常にアナログなシンセサイザーとなっている。
日本では初期のYMOが使用していて有名である。
演奏中の音色を変えるのにオペレータが配線を抜き差しして非常に大変だが、パフォーマンス的には格好良かった。

そして、1980年代前後好評を博したシンセサイザーは以下の「Prophet-5」である。
Prophet5
Prophet-5
これも「MoogSynthsizer」同様、アナログ・シンセサイザーとなっている。
当時画期的だったのは、和音演奏ができ音色を記憶できることであった。
また、大きさもスモール化されて現在のシンセサイザーと同程度になっている。
金額的にも高価であったため、プロミュージシャンが中心に活用されていた。

次に大きな変化があったのは、1983年に発売されたYAMAHAの「DX7」である。
Dx7
YAMAHA DX7
この製品は今までとは違うデジタル・シンセサイザーが採用された。
値段が比較的低価格に設定されていたことと、FM音源といった当時としては珍しい音色、そして時代に合ったデザインや拡張性が評価され、プロ・アマ問わず世界中のミュージシャンに活用された。
そして今までのアナログ・シンセサイザーと操作的に大きく違うことがある。それは、"つまみ"や"ボタン"が少なくなったことである。特に"つまみ"は1つも無かったと記憶している。
音色を作る際は、ボタンを押してデジタル特有の階層を追って小さい画面を見ながらの作業となる。
このような操作では当然ライブの時のリアルタイム音色変更も直観的操作は難しい。
事前に設定したパラメータを変更することは可能だが、事前に設定されていないパラメータを変更したい場合は時間を要する。

そこで、音色変更等リアルタイムにそして直観的に操作したい要望がミュージシャンから上がり、最近のデジタル・シンセサイザーは"つまみ類"が見直され復活されてきた。
Vsynthgt
Roland V-Synth GT

このように最終的には操作性が重要視されてくるものである。
DX7はデジタル・シンセサイザーとしては初期の製品である。開発としてはプレイヤー重視より技術重視となっていて、デジタルの開発がしやすい階層化された開発者側に立った操作性となっている。
この階層化は操作するに当たりどの階層にさわりたいパラメータがあるのか考える必要がある。そして”つまみ”の場合は位置といった感覚で自然と記憶されることが可能であるため、操作に頭をあまり使うことはない。
この部分が直観的といった利用者にやさしい操作感であろう。

今の時代は技術的には成熟しており、特に家電製品は使わない機能の方が多いくらいである。そこで、操作性を重要視して使ってもらえる機能を絞り込む必要がある。
実際、そのように利用者の立場に立った操作性重視の商品を展開している企業が成功している。
やはり、「使っていて気持ち良い感覚」を生む商品やサービスを活用することがスマートで格好良い。

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