オルタナティブ・ブログ > Social Reading >

ソーシャルメディア×読書など。ソーシャル・リーディングな日常を綴ります。

新刊ちょい読み 2012/3/21~3/31

»
「機動戦士ガンダム」の巨大基地をつくる!

「機動戦士ガンダム」の巨大基地をつくる!

  • 作者: 前田建設工業株式会社
  • 出版社: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/3/21

アニメに出てくる架空の建造物を、プロの建設会社が真剣に作ろうとしたら一体どうなるのか?そんな、とてつもなく壮大なスケールの企画が実現した。

担当したのは、大手ゼネコン・前田建設のファンタジー営業部。過去にも『マジンガーZ』の地下格納庫や『銀河鉄道999」の高架橋など、各種の建造物を積算をしたことでもおなじみのプロジェクト。本書は、Webで連載していたその模様を、書籍化したものだ。

今回挑戦するのは、国民的アニメ『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍基地ジャブロー。時は、人類が宇宙に移民を開始してから半世紀が過ぎた宇宙世紀の時代。場所は、南米アマゾン川、ギアナ高地周辺の地下深く。地球連邦軍の総本部としてひっそり佇む地底の巨大秘密基地、それがジャブローである。

遊び心を持ちながらも真剣に検討している様子が、ディテールへのこだわりから伝わってくる。例えば、ジャブローの建造物が、はたして最初から軍事基地だったのかという視点。これについては、貴重な生態系のあるアマゾンという立地を鑑み、元々は生物多様性の研究施設だったものを用途変更したのではないかと仮説を立てる。リアルな設定が魅力のガンダムとはいえ、現実と架空の間には埋めなければならない溝が、実に多いのだ。

また、「ジャブローに関連して何を検討して欲しいか?」というアンケートにおいて、圧倒的多数で要望が寄せられたのが、量産型モビルスーツ「ジム」の生産工場。これに応えるために、重量や大きさが近い、大型トラックやホイールローダーの生産工場を見学しながら悪戦苦闘する。

はたして気になるジャブローのお値段は?そして、工期はどれくらいかかるのか?ちなみに本のオビには「本当に請け負います!!」の文字が。建設業の面白さも余すところなく伝えており、ガンダムファンならずとも楽しめる一冊。
(※HONZ 3/23用エントリー


東京右半分

東京右半分

  • 作者: 都築 響一
  • 出版社: 筑摩書房
  • 発売日: 2012/3/24

最近、紹介する本が3,000円を超えていると「ブルジョア本!」の掛け声がかかり、俄然、みんなのチェックが厳しくなる。要は「3,000円超える本なんだから、さぞかし良い本なんでしょうねぇ。」というわけだ。

そんな中、本書はブルジョア基準比200%を達成する6,000円(税抜き)のお値段だ。ダブル・ブルジョア本、略してダ・ブルジョア。厚さ:32ミリ、重さ:900グラム、ページ数:575頁。しかし、その内容の濃さが、スペックを軽く上回るのだから、紹介しない訳にもいかない。

本書で紹介されている東京右半分とは、地図で見たときに東京23区の東側に位置する地域だ。すなわち北区、荒川区、文京区、新宿区、足立区、葛飾区、江戸川区、江東区、墨田区、台東区、品川区。そして今、東京のクリエイティブパワーはこの右半分に移動しつつあるのだという。

表紙の美少女からして侮れない。新手のアキバ系美少女かと思いきや、なんとラブドール。しかも右半分と言いながら、両方の胸の半分を見せているところがニクい。

そのラブドールの製造元が、台東区・上野にあるそうだ。2001年にシリコン製のラブドール登場というパラダイムシフトが起きて以来、その顔の作り方なども大きく変貌を遂げたという。美人をそっくりに真似しても、死体のようになってしまい魅力的にはならず、人間の造形美を良いほうにデフォルメするのがコツだと、造型師さんは熱く語る。

バーや飲み屋の話題も盛りだくさん。足立区竹ノ塚のフィリピン、錦糸町のタイのようにアジア色が濃厚な地域もあれば、褌スナック、梵字バー、男の娘メイドバーなんていうのもある。その酒池肉林のディープさは、まさに禁断の果実。

もちろん、本関係の施設だって見逃せない。新宿区の楊場町には、SM・フェティシズム専門の雑誌・資料を蒐集している資料館があるほか、台東区鳥越には女装図書館などというものまであるというから驚く。

85の物語と108のキャラクターで綴る、都心でも郊外でもない、地方としての東京。東京スカイツリーの開業で沸き立つ東京右半分だが、本当に面白いのは、ガイドブックなどには載っていない、こんな場所なのだと思う。

本の値段はブルジョアジーだが、紹介されているお店での値段は、その面白さに比べれば決してブルジョアジーではないはず。損して得を取るべし。
(※HONZ 3/27用エントリー

このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント等につきましては、Facebookページの方でお願いいたします。

ノンフィクションはこれを読め!HONZも、あわせてよろしくお願いいたします。

Comment(0)