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新刊ちょい読み 2012/1/21~1/31

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バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)

バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)

  • 作者: ダン・コッペル、黒川由美
  • 出版社: 太田出版
  • 発売日: 2012/1/19

ありふれた食べ物でありながら、地球上のどんな果物よりも多くの人に消費され、何億という人々を飢えから救っているバナナ。本書は、そんなつつましやかな果物の壮大な歴史物語だ。この本を紹介するにあたって、「そんなバナナ!」とだけは言いたくないのだが、驚きの連続である。

19世紀後半のアメリカにおける需要拡大を背景に巨大化するバナナ複合企業と、中央アメリカにおけるバナナ農園の労働者たち。ここにもまた、砂糖やチョコレートと同じような搾取の構造を見ることができる。そんな中、コロンビアではバナナ労働者虐殺事件が起き、グアテマラでは戦争のきっかけとなり、あるアメリカのバナナ王は政治的策略が露呈するのを恐れてマンハッタンの高層ビルから身投げした。

そんな数奇な運命を辿ってきたバナナなのだが、現在パナマ病をはじめとする伝染病が猛威をふるって大変なことになっているらしい。事態は深刻だ。「そんなパナマ!」と遊んでいる場合ではないし、「そんなバナナ!」と元に戻している暇もない。

バナナという果物は本質的に脆弱なのであるそうだ。答えはバナナの皮をめくれば見つけられる。よくよく思い返せば、バナナには種がない。バラを指し木で増やすのと同じような手法で増やすため、あらゆるバナナが遺伝子的には同一なのである。これは、全てのバナナが等しく同じ病気に弱いということを意味する。

世界中で急ピッチに進められるバナナの品種改良、その最前線。はたして人類は、バナナを守れるのだろうか。
(※HONZ 1/23用エントリー

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

  • 作者: 平川克美
  • 出版社: ミシマ社
  • 発売日: 2012/1/20

一見、ビジネス書っぽいタイトルが付いているのだが、いわゆるマイクロビジネスをテーマとした本ではなく、これからの時代を生き抜くための思考の原理原則が描かれている一冊。問われているのは、わたしたちの生活、社会がこれまでの延長線上でやっていけるのか、否かということだ。

著者はいわゆる小商いの事例として、昭和30年に商店街によく見られた帽子屋の例を取り上げる。当時、そのような帽子屋がなぜやっていくことが出来たのか?それは、一日に数個の商品が捌ければやっていける徹底したコストバランスで営んでいたということがあげられている。と、ここまではよくある話。

だがもう一つ、帽子には「紳士のたしなみ」を表す社会的な役割があったのだという。当時は明確に存在した大人と子供の線引き。大人とは「いま・ここ」に対して責任を持つ存在であったのだ。 それなら責任を持つとは、どういうことなのか?それは当事者である自分が努力すれば解決する問題に、きちんと向き合うこと。このためには、ヒューマン・スケールという人間寸法を意識して世の中を見つめ直す必要があるというのが著者の主張だ。

テクノロジーや文明の発展によって見失いがちな個人というもの。そんな中でヒューマン・スケールを復興させるためには、やみくもに成長や利便性を追うのではなく、これまでとは別の価値軸を見出さなければならないと著者は説く。当たり前のことが当たり前のように語られているのだが、ハッとさせられる思いがする。
(※HONZ 1/26用エントリー


電卓のデザイン DESIGN OF ELECTRONIC CALCULATORS

電卓のデザイン DESIGN OF ELECTRONIC CALCULATORS

  • 作者: 大崎眞一郎
  • 出版社: 太田出版
  • 発売日: 2012/1/26

世界で初めて電卓が登場したのが1962年。各桁ごとに1から9のボタンが並んだフルキーボード方式で、重さは14Kgほどあったそうだ。それから50年。最近ではすっかり姿を見ることも少なくなってしまったが、その歴史には驚くべきほどの技術革新があったという。

本書はそんな電卓の50年を、写真で振り返る一冊。著者は電卓の蒐集家。これまでに国内外あわせて1000以上の電卓を集めてきたそうだ。ちなみにその大部分は、著者のサイト「電卓博物館」でも見ることができる。

一口に電卓と言っても、その種類は多岐にわたる。本書では、モダンデザイン電卓、ヴィンテージ・デスクトップ電卓、ヴィンテージ・ポケット電卓、ヴィンテージ・複合電卓、おもしろ電卓の5つのカテゴリーに分けて紹介されている。

日本の電卓史に燦然と輝くのは、1972年に発売されたカシオミニ。3万円程度が平均的な価格であった時代に12,800円という常識破りな低価格を打ち出し、いわゆるポケット電卓の定番商品となったそうだ。


そのほか、複合電卓のカテゴリーでも、ゲーム付き、音声読み上げ、ラジオ付きなどの機能が1980年代の段階で登場しており、まるでスマホの祖先を見ているようでもある。 今や、すっかりスマホやPCの一機能として取り込まれ、偏在化してしまった電卓。ひょっとしたら現在の姿こそが衰退ではなく、進化の最終形ということなのかもしれない。
(※HONZ 1/29用エントリー


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