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【書評】『ニッポンの書評』:プロとアマの差

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著者: 豊﨑 由美
光文社 / 新書 / 230ページ / 2011-04-15
ISBN/EAN: 9784334036195

書評の書きづらい本というものに、出くわすことがある。その多くは、本の内容と自分との間に補助線を引けなかったということが原因だ。しかし、本書は濃厚な補助線を引けるにも関わらず、実に書評が書きづらい。その善し悪しが、明解に訴求されており、何を書いても待ち伏せされている気分になるのだ。こうして、書き出しに慎重になっている時点で、手の平の上の孫悟空だ。本書は、そんな書評のあるべき姿について語った一冊。鋭い切れ味でおなじみの書評家、豊﨑由美氏がメッタ斬りにしている。

◆本書の目次
第1講 大八車を押すことが書評家の役目
第2講 粗筋紹介も立派な書評
第3講 書評の「読み物」としての面白さ
第4講 書評の文字数
第5講 日本と海外、書評の違い
第6講 「ネタばらし」はどこまで許されるのか
第7講 「ネタばらし」問題 日本篇
第8講 書評の読み比べ - その人にしか書けない書評とは
第9講 「援用」は両刃の剣 - 『聖家族』評読み比べ
第10講 プロの書評と感想文の違い
第11講 Amazonのカスタマーレビュー
第12講 新聞書評を採点してみる
第13講 『1Q84』一・二巻の書評読み比べ
第14講 引き続き、『1Q84』の書評をめぐって
第15講 トヨザキ流書評の書き方
対談  ガラパゴス的ニッポンの書評 ー その来歴と行方 豊﨑由美×大澤聡
前半の争点の一つとして、ネタばらしの是非ということがあげられている。著者はネタばらしについて、断固反対の立場。<物語の勘所に触れなければ批評的な書評は書けないという意見に対しては「それはヘタだから」とお答えしておきます。>とまで言い切っている。しかし、これはおそらくフィクションに限定されることではないかと思う。ノンフィクションについての勘所は、読み手によって驚くほどさまざまであるケースが多いからだ

そんなわけで、自分が本書の勘所と思うところを思い切って挙げてみると、それはプロの書評について記してある下記の一文ではないかと思う。
プロの書評には背景があるということです。本を読むたびに蓄積してきた知識や語彙や物語のパターン認識、個々の本が持っているさまざまな要素を他の本がもっているさまざまな要素と関連づけ、いわば本の星座をのようなものを作り上げる力。それがあるかないかが、書評と感想文の差を決定づける。
つまり良い書評とは、本の外部要素を使って、いかにその本について語るかということが肝なのである。
しかし、それ以上にプロの凄味を感じるのは、「批判は返り血を浴びる覚悟があって初めて成立するんです。」という一節。匿名のブログやAmazonのレビュー欄での批判をしている人達に、ツルハシの一撃を加えている。こんな覚悟、到底持てやしない。これぞプロフェッショナル。

この一点を持って、本書は<その人にしか書けない一冊>なのである。辛辣な口調とはうらはらに、本書から滲み出る、強い愛情と覚悟。書評を書く全ての人におススメの一冊。走れ、書店に!


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