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【書評】『Nozbeクリエイティブ仕事術』:人生を階層構造化し、未来を規定する

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インプレスジャパン / 単行本(ソフトカバー) / 224ページ / 2011-03-10
ISBN/EAN: 9784844329916

本書はGTD(Getting Tings Done)を実践するためのWebサービス「Nozbe」初の公式ガイドである。
Nozbeとは一言でいうとWebやスマートフォンで使える「To Do管理サービス」。しかし、この種の「To Doサービス」の多くがそうであるように、どんな機能があるのかというだけでなく、どのように運用するのかということも重要である。本書はその運用面に力点を置いたガイドブックであり、Nozbeというサービスを構成する重要なコンテンツの一つであるとも言える。

◆本書の目次
第1章:Nozbeを実践的に活用するための5つのポイント
第2章:ひらめきや気になることをNozbeのInboxにすべて「収集」する
第3章:「見極め」と「整理」でInboxを空にする
第4章:「日次レビュー」と「実行」でプロジェクトを着実に完了させる
第5章:Nozbeでもっとも重要な「週次レビュー」を効率よく行う
第6章:実践ではiPhone、iPad、Androidアプリが大活躍
第7章:チームでプロジェクトを完遂するためにNozbeを共有する
第8章:Nozbeをもっと便利に使うための応用テクニック
さて、このNozbeというサービス、いかなる特長を持つものなのか、簡単に洗い出すと以下の2点が挙げられる。
・さまざまなアクションをプロジェクト、コンテキストといった複数の軸で整理することができる。
・Evernote、GoogleCalender、Gmailといった他のWebサービスとの連携が抜群である。
そして、このサービスに対する著者の解説が半端ない。「収集」、「見極め」、「整理」、「見直し」、「実行」というタスクの遂行フローに沿った解説は、著者がNozbeとの日々を綴った「私小説」の域に達しているのではないだろうか。本書のキャプチャ画面だけ追っていくと、そのままライフログになっているようなイメージである。

さらに、もう一点驚きなのが、著者のNozbeというサービスに対する信頼感である。To Doサービス」は、ともすれば自分に取って鬱陶しい存在にもなりうる。しかし、著者のNozbeにかける愛情こそが、「忘れる快楽」を生み出しているとも言える。人間誰しも、信頼できる存在にあれや、これやと言われた方が素直に動けるのである。

ひょっとすると著者が本書で記述している領域は、Google、Facebookと遷移してきた「検索からソーシャルへ」という大きな流れのその先に位置するようなものではないかと思う。Googleが地図なら、Facebookは隣人、それならNozbeは聖書、しかも自分自身で記述する聖書なのだ。過去の自分によって記述された理想的な未来は、Nozbeによって規定され、現実のものとなるのである。

自分自身、Nozbeを半年ほど使い続けてきたのだが、改めて本書を読み、いくつか運用面で訂正すべき個所があることに気付かされた。具体的には以下の二点。
・プロジェクトとコンテキストの設定を間違えていた。
通常の階層の概念から考えると、「プロジェクト」を大きなスパンでの単位に設定し、その下の階層に「コンテキスト」を振り分けてしまいがちである。しかし、「プロジェクト」とはある目的を達成するための有期的な概念である。「プロジェクト」のネーミングには「望む結果」を記入すべきであり、「コンテキスト」より短期的な概念が来るのが望ましいのだ。よくよくNozbe見ると、プロジェクト欄の下に「完了したプロジェクト」へと書いてある。タスクを遂行することが目的ではなく、結果を出すことが目的なのである。

・自分自身Nozbeを信じ切れていなかった、ということが分かった。
自分がこれまでNozbeに書き込んできたタスクは、向こう一週間くらいのスパンでのアクションのみであった。どこかで自分の記憶というものを捨て切れず、このサービスを使い切れていなかったということでもある。定型的な記憶はNozbeに任せて、非定型なタスクや、より高い次元のことに向き合うべきなのである。
たかが「To Doサービス」、されど使いようによっては、人生のさまざまなアクションを階層構造化し、自分自身の未来を規定する存在にもなりうる。そして本書は、そのために書かれた一冊でもある。仮に他の「To Doサービス」を使用していたとしても、本書に書かれている内容は有用なのではないかと思う。


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