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【書評】『全貌ウィキリークス』:ジュリアン・アサンジの二面性

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早川書房 / 単行本(ソフトカバー) / 416ページ / 2011-02-10
ISBN/EAN: 9784152091970
 
ウィキリークスのメディアパートナーとして活動をともにするドイツ「シュピーゲル」誌のトップ記者によるドキュメント本。ジュリアン・アサンジの信頼を勝ち取り、密着取材を許可されて描かれた内容は、明らかに他のウィキリークス本と比べ距離感が近く、非常にダイナミックである。
 
◆本書の目次
弟一章:「国家の敵」ウィキリークス
第二章:ジュリアン・アサンジンとは誰か
第三章:ウィキリークス誕生
第四章:「コラテル・マーダー」ビデオの公開、マニング上等兵の背信
第五章:大手メディアとの協働、アフガン戦争記録のリーク
第六章:内部崩壊の危機、イラク戦争日誌四〇万件公開の衝撃
第七章:世界が震えたアメリカ外交公電流出
第八章:包囲されたウィキリークス
第九章:ウィキリークスの未来、世界の未来
マーク=ザッカ―バーグがFacebookを生み出した年から遅れること2年、2006年に開設されたウィキリークスは、評判経済におけるもう一人の主人公である。透明な社会を指向する彼らの行為は、その類まれな技術力で情報の共有を促進し、国家間のソーシャルグラフに大きな影響を与えてきた。
 
たびたび投げかけられる、ウィキリークスはジャーナリズムか、情報テロかという問いかけは、ジュリアン・アサンジという一人の男が放つ言動の二面性によるところが大きい。
 
◆情報テロ寄りの発言
・「大物たちのもくろみを台なしにするのが大好きなんだ。こんな面白い仕事はないよ。」
・「我々は人類の天空に新しい星を輝かそうとしています。」
・「ちょっとひと騒ぎおこそうじゃないか。」
・「僕はこの組織のハートであり魂なんだ。創設者でスポークスマンで、最初のプログラマーで主宰者で、出資者で、残り全部。君がそれを問題だというんなら、失せろ。」
・「CNNは恥を知れと言いたい、ラリー、あんたもだ!」
・「僕の結論は、国際メディアをとりまく状況がどれも悪く、ゆがんでいるから、メディアがないほうがましなくらいだ、ということだ。」
 
◆ジャーナリズム寄りの発言
・「ウィキリークスはすべての人の友と見られなければならない。なぜなら我々はすべてのに人の個人に、それまで存在しなかった道を発見できるように、我々の知識を提供しようとしているからだ。」
・「コンテンツはそれ自身が語るのであり、説明を必要としない。誰もが検討し分析できるように、開放しなければならない。勝利、自由、真実。」
・「おそらく正義の戦争とやらを始めるよりも、まったく参戦しないほうが、多くの人命を救えるだろう。」
・「戦争の悲惨さと日常化している残忍さへ強い光を当て、僕らの戦争を見る目を変えるだけでなく、現代のすべての戦争を見る目も変えるだろう。」
・「公表は透明性を高め、その透明性がよりより社会へとつながっていく。チェック機能がうまく働けばそれだけ腐敗が避けられ、民主主義は強固になる」
この二面性は数奇な生い立ちによって形成された彼自身の性格によるところも大きいが、意図的にそのように振舞っているようにも思える。つまり、彼は自分自身に色がつくのを恐れているのだ。自分を理解されたくないし、縛られたくもない。政治的にあらゆる傾向を持つ内部告発者に開かれている存在であるために、そして得体の知れなさで注目を引き、リークの影響をさらに大きくするために。
 
本書はジュリアン・アサンジの、こんな台詞で幕を閉じる。「組織としてのウィキリークスは、非常に安定している。僕たちはそれほど簡単には排除されないよ。でも、ぼく自身自分から仲間はずれになりたがる性格なんだ。これが僕たちの最大の問題だよ」。情報の機密を公開することで、世の中を動かしてきたウィキリークス。その影響で彼らの存在自体も脚光を浴びていくことは、ウィキリークス内部の情報もリークされつつあることを意味する。そしてそれは、ジュリアン・アサンジのさらなる変節を生み出していくだろう。ある意味我々は、勝者なき時代の中へと、突入しているのではないだろうか。
 
 
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