【Review】映画『ソーシャル・ネットワーク』:”Like!”を作った男をめぐる”Like!”
監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:アーソン・ソーキン 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント
この冬、最大の注目を集め、アカデミー賞最有力の呼び声も高い、映画『ソーシャル・ネットワーク』。映画で取り扱っているのは、マーク・ザッカーバーグのハーバード大学在学時における、Facebook立ち上げ当初の話。彼自身が訴えられた二つの訴訟をベースに、スキャンダラスに展開されている。
とにかくスピード感に圧倒された。カット替わり、台詞まわし、ともに尋常じゃないスピードで繰り広げられ、Facebookの成長、サービス開発のスピード感を彷彿とさせる。この映画で大きなトピックスとして描かれていることでもあるが、アイディアは創造の1パーツにすぎない。似たようなアイディアは、そこらじゅうに転がっており、いかに速く形を作り、いかに速くユーザーを呼び込むかが、大きな運命の分かれ道。ソーシャルメディアにおけるビジネスの世界は、ある意味スピードコンテストなのだ。
本作において、マーク・ザッカーバーグは典型的なギークとして描かれており、その言動はまるでマシンガンのようである。ただし、マシンガンが鳴りをひそめる静的なシーンとのバランスは非常にメリハリが効いており、特に、もう一人の主人公ともいえる、ショーン・パーカーとのやり取りは見応えがある。
評判経済とも呼ばれる、新しい世界のプラットフォームを生み出した、マーク・ザッカ―バーグ。その彼自身が、”評判”によって導かれた”成功”と”失敗”。それが、この映画の大きなテーマだと思う。シリコンバレーにおける、サービス自体の評判がFacebookを成功へと導いた。しかし、ザッカーバーグ自身は彼の評判を理由に、裁判において不利な決着を受けいれなくてはならない。
おそらくフィクションと思われるが、ラストシーンも非常に印象的だ。5億人の”つながり”を作った男自身の”つながり”は、いかに? とにかくおススメの一本である。
※映画『ソーシャル・ネットワーク』 1月15日(土)丸の内ピカデリー他、全国ロードショー