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【書評】『13日間で「名文」を書けるようになる方法』:考えもつかないことを、考えてみる

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著者: 高橋 源一郎
朝日新聞出版 / 単行本 / 396ページ / 2009-09-04
ISBN/EAN: 9784022506337

言わずと知れた人気作家、高橋源一郎氏による一冊。明治学院大学で行われた「言語表現法」という講座の、全13回の講義録である。毎回の講義を通して著者自身が名文と思う一節を紹介しながら、学生たちに課題を出して行くという講義形式。しかし、著者の学生に対する愛情溢れる対応とはうらはらに、投げかけられるボールは、とんでもない角度から放り込まれてくる印象である。

変化の激しい昨今の時代において、今までの常識はこれからの常識ではない。常識を疑うためには、自分の既成概念の外側にある視点で物事を見つめることが肝要になってくる。そういった意味において、著者が学生に投げかける視点の数々は、予測不能なものばかりである。

◆著者が学生に投げかける視点の一例
・渋谷で、観客のほとんどが入っていない映画を見た後で「文章」について考えてみる
・文章というものは、世界の「外」で書かれるものか、世界の「中」で書かれるものか
・「日本国憲法前文」とカフカの『変身』という、似ても似つかぬものを一緒に読んでみる
・存在しない国の憲法を書いてみる。
・右ききのための文章と左ききのための文章
・「あなた」は存在するけれど、「あなたたち」は存在しないということ
・「詞」をかかずに「詞」を書いてみる
全13回の講義のうち、一度だけ休講になる回がある。その休講明けの講義において、著者が休講事に起きていた出来事を話し出す。それは著者がその時に書いている小説よりも奇怪で、悲しい出来事でもある。そのことをありのまま、感じたままに話していく様は、まさに名文。どんなに着飾って練習を積んでも、自分の気持ちをストレートに書くことに勝る名文はない。図らずも起こった出来事によって著者のメッセージが痛いほど伝わってくる。

一点だけ苦言を呈させてもらえば、タイトルで非常に損をしていると思う。本書には高い志があり、よくあるHow to本とは一線を画すものである。タイトルのみ名文にあらず、である。


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