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【書評】『フェイスブック 若き天才の野望』:哲学と仕組み

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著者: デビッド・カークパトリック
日経BP社 / 単行本(ソフトカバー) / 544ページ / 2011-01-13
ISBN/EAN: 9784822248376

フォーチュン誌の元ベテラン記者が、マーク・ザッカーバーグをはじめとする多数のフェイスブック社員へのインタビューにもとづいて描いたフェイスブック本の決定版。487頁に及ぶボリュームで、創設時から最近のエピソードまでが余すことなく網羅されており、まさにバイブルである。
本書は、大きく分けて二つの内容によって構成されている。一つはフェイスブックというベンチャー企業の成功ヒストリーという視点、もうひとつはフェイスブックがネットにどのような影響を与えたかという視点によるものである。
 
◆本書の内容
第1章:すべての始まり
第2章:パロアルト
第3章:フェイスブック以前
第4章:2004年、以前
第5章:投資家
第6章:本物の企業へ
第7章:2005年、秋
第8章:CEOの試練
第9章:2006年
第10章:プライバシー
第11章:プラットフォーム
第12章:150億ドル
第13章:金を稼ぐ
第14章:フェイスブックと世界
第15章:世界の仕組みを変える
第16章:フェイスブックの進化
第17章:未来へ
個人的には、2006年以降の動きが興味深かった。多くの日本人ユーザーにとっては、フェイスブックを使い始めた時に、既に現在の原型が完成してしまっていたのではないかと思う。その一つ一つの機能が、どのような順番で、どのような意図をもって追加され、当時のユーザーにどのように受け止められたのか、それらを追体験する行為は、ちょっとした時間旅行でもある。そして、昨年日本でキーワードになったような言葉は、ほとんどがフェイスブックの歴史とともに開発された概念であることに、驚かされる。

◆フェイスブックの機能追加の歴史
2005年 ソーシャルグラフという概念を、写真アプリの成功体験より抽出
2006年 ニュースフィード開始。本格的な露出社会の登場
2006年 プラットフォーム化によりサード・パーティのアプリ受け入れ開始。
2007年 ビーコン開始に伴うソーシャル・アドの開始
2008年 フェイスブック・コネクト開始によるソーシャル・ウェブ化
2009年 ニュースフィードの改良に伴うリアルタイム化
 
フェイスブックは、現実社会をそのままネットに置き換えたようなものであるとよく言われるが、厳密には違う。マーク・ザッカーバーグは、ネットへ置換する際に、自身の理想の世界に近づくように、情報と金、二つの座標軸を移動させた。プライバシーについては、フルオープンを基準に引き算で設計し、貨幣については0をMAXに設定した。そこには、「贈与経済や透明性のある世界は、よりよく統治された世界や、より公正な世界をつくる」という明確な哲学がある。そして”哲学”と”仕組み”の共存こそが、フェイスブックを他のソーシャルメディアとは一線を画すものにしている最大の要因なのだ。

マーク・ザッカーバーグの理想社会への道のりは、ユーザーの反発やニーズを受け、一歩後退したかのようにも見える。ただし、それはフェイスブックを、より現実社会に近づけたとも言える。また、反発の活動自体にフェイスブックが利用されることによって、フェイスブックとユーザーの間には、何某かの絆が形成されたのも事実である。

2011年、フェイスブックによって、どのような新しい機能が追加され、どのような新しい概念が生み出されるのだろうか。それが良くも悪くも、同時代性を帯びた熱狂とともに迎えられること、それが日本における、フェイスブックの本当の意味でのスタートなのだと思う。


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