キリンを食う? ヤッホーブルーイング「宣伝には社長自ら体を張れ」
赤坂、ザ・キャピトルホテル東急の2階を歩いていると、いつも目に付くビール専門レストランがあります。
このレストランは「よなよな BEER KITCHEN」。クラフトビール最大手のヤッホーブルーイングのビールを飲むことが出来ます。
クラフトビールとは、中小メーカーが長期熟成など独自の手法で作るビールです。
5年ほど前、「よなよなエール」を飲み、ヤッホーは、それ以来注目しているビールメーカーです。
私にとってのビールとは、喉越しを楽しむためのものではなく、味わい、料理と合わせるものです。そのため、通常飲み会で出る「とりあえずビール」のビールはあまり好きではありません。ヤッホーの製品は、コクや苦み、甘みが感じられたり、個性を引き出す作りかたとしているので味を楽しむことができます。
最近、アメリカでも、ホップを通常より多く使用したリッチな味わいのクラフトビールが人気というニュースを見ました。やはり、丁寧に作られているので味が良く、値段が高くてもよく買われるため、現在は生産が間に合わないほどだそうです。
そのヤッホーブルーイングが24日、キリンビールと資本業務提携すると発表しました。
キリンは今年1〜6月のシェアが過去最低に落ち込み、ビール事業の立て直しに向けて、ヤッホーの成長力に目を付けて提携交渉を進めてきたそうです。
一昨日、ニュースでの会見でキリンの磯崎社長が「伝統的なビール会社では開発やマーケティングの発想に限界がある。ヤッホーとの提携は心強い」と話しておられました。
ヤッホーは2005年以降9年連続で増収増益、今年の1〜8月の生産量も前年同期比5割増えました。
そして、値段は、350mlで270円〜290円という高価格でも売れているのです。
価格勝負をせず、味にこだわり、価値を上げることで成果を上げている素晴らしい例だと思いました。
ところで、私がどうしても気になってしまったのが、ヤッホーの井手直行社長のプレゼンです。
ニュースではほんの一部分しか出ませんでしたが、井手社長は舞台度胸のある人です。
プロンプターも使わず、常に表情豊かに、アイコンタクトをとり、息をたくさん吸って、しっかりした声で分かりやすく話しており、ヤッホーの明るい社風と気合いが感じられて大変好感度が高かったと思います。
圧巻は、キリンの磯崎社長と二人で「よなよなエール」を持ってのツーショット。二人で缶ごとグビリ。磯崎社長も「美味い!」と思わず声を上げます。
「よなよなエール」プリントTシャツというファッションと、自社製品を磯崎社長にも持ってもらうことでのPR効果は抜群です。
思わず「やるなあ」と声に出してしまいました。
大企業との会見で、Tシャツは躊躇しそうですが、井手社長はいつも、この「よなよなエール」プリントのTシャツを着ていますから、それで良いのです。
社長は、会社の顔であり、最高のトップセールスですから、「このファッションといえばこの人」となれば、勝ち。
社長は会社の宣伝のために徹底的に体を張るべきです。
例えばこれは、スーツでも可能で、「この人は、いつも会社のマークと同じ色の赤いネクタイをしている」でも良いのです。
よなよなエールプリントのTシャツは、井手社長のキャラクターとマッチングが良いことはもちろんのこと、一からビール作りを模索してきたであろう過程を想像させる、職人のような太い腕を「ムキッ」と出してポーズをキメている姿は、完全に空気を支配していました。
すべての面で、これからがさらに楽しみな社長さんです。
ところで、ヤッホーさんのビールは美味しいです。
「よなよなエール」も良いですが、「前略 好みなんて聞いてないぜSORRY 其ノ三 黒五インペリアルポーター~黒糖極深仕立て~」は、超個性的で、一飲をおすすめします。
名前は長いですが、コクが凄く、本場ベルギービールを彷彿とさせる本格的な味。
食後にじっくり飲むのも良いですね。
他にも、「インドの青鬼」「水曜日のネコ」など個性的なネーミングも冴えているヤッホーの商品。今でも他社が商品を真似てくることを考慮して、味・コンセプトとも最先端を行くような個性的な商品を作ろうと、常に進化を続けているそうですよ。
私は仕事柄ですが、アルコールを飲むと声のコンデションに影響が出てしまうため、実はあまり飲みません。アルコールをとるとどうしても声帯周辺が充血してしまい、喉に良くないからです。
ごくたまに、気に入ったものを少しだけ飲むことはあります。アルコール度数が低いビールであっても、水を用意して「チェイサー」しながら飲むようにしています。
これからも、貴重なビールタイムにかかせないお気に入りを飲んでいきたいと思っています。