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こういうピアニストを聴いてほしい アレクサンダー・コブリン

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世界的にはあまり有名ではないけれど、本当に素晴らしい感動を与えてくれる演奏家はたくさんいると思います。
 
ロシアのピアニスト、アレクサンダー・コブリンもその一人です。
 
2003年浜松の国際コンクールで第2位を受賞したときに初めてその演奏にふれ、感動を覚えました。
青白い炎がゆらめくような、あやしく不健康な音楽性。すでに大人の凄みを感じ、当時23歳でしたがとてもそうは見えません。彼が出てくると空気が一変しコンクールというよりリサイタルの雰囲気です。
個性を前面に押し出し、他のコンテスタントが真面目な優等生的に見えてしまうくらいの演奏でした。
恍惚に溺れるようなその魅力的な演奏にすっかりまいってしまい、来日すれば必ず演奏会にかけつけていました。
 

2年前、浜離宮でのリサイタルでは、550人ほどのホールでかなり空席が目立ちました。
 
しかし訪れた人は皆コブリンのファン。全員の、手が痛くなるような熱い拍手に応えてアンコールを何曲弾いてくれたことでしょう。
 
ラフマニノフの演奏ではもう・・・あの色彩、なんという情感・・・涙があふれてきました。
 
19世紀から20世紀前半に確かに存在した巨匠の香りがする音楽。
ピアノの性能を最高値まで引き出す、これがロシアのピアニズム、というのでしょうか。
録音でしか聴いたことがないのですが、ホロヴィッツやリヒテルの香りを感じさせてくれるのです。
 
そんなコブリンですが、昨年の秋以降来日の話を聞きません。
 
ショパンのピアノ曲全曲録音の企画も進んでいないようです。
 
現在、結婚し、お子さんも生まれ、モスクワ音楽院の先生になっています。
 
やっぱり生活もあるのかなあ・・・。
先生をやってリサイタルをこなすだけの練習時間は確保できているのだろうか・・・などと余計な心配をしています。
 
コブリンの素晴らしさはCDでは伝わりにくいかもしれません。
聴くならぜひ生で聴いて欲しい。
彼の演奏に少し近いのが、ちょっと傷もあるけれど、ヴァン・クライバーン・コンクールでのライブ録音です。
すごい息づかいが生々しくマイクに入ってしまっていますが、熱い思いがいっぱいの入魂の演奏だと思います。
 
インプレサリオ(音楽興行師)たちの食指が動くようなスター性や話題性が足りないのか、それとも、やっぱりある一部の限られた有名コンクールでの一位が必要だったのでしょうか。
いやしかし、彼もこれからじっくり腰をすえて音楽性を深めていかなくてはならない大切な時期だと思います。
下手にちやほやされてしまうより良かったかもしれません。
 
これからの日本は、精神的に成熟し、本当の意味で豊かになっていくだろうし、本物が分かる人たちが増えてくるのではないかと考えます。
こういった音楽家が認められるようになって、素晴らしい音楽を皆さんに聴かせてほしいですね。

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