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クラウドで情報基盤があるからこそ、組織の壁を越えた情報共有が大きな価値を発揮する。そしてそれは、有事に限らないはずだ

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今回の震災では、ITの面でも、組織の壁を越えて大きな価値を生んだ事例が数多く生まれています。

例えば、昨日(2011/4/4)の日本経済新聞の記事「経営の視点 企業連携促す震災対応――情報共有、平時から意識を」では、防災科学技術研究所が震災3日後に開いた震災情報サイト「ALL311」が紹介されています。

---(以下、引用)----

...被災地の様子を地図に示すサイトで、NTT東日本の子会社が航空写真情報サービスの写真地図を無償提供した。

 防災科研は政府の計画で3年前から防災地図情報の作成に着手。期せずして東日本大震災で成果を発揮した形だ。計画には日本IBMやニフティなどがクラウド基盤を提供している。

 責任者の長坂俊成氏は「重要だったのは様式が異なる各社の情報を一緒に表示できるよう手順を共通化したことだ」と言う。企業はビジネス機会をにらみ、情報を抱え込む傾向が強いからだ。だが、震災は企業間の壁も一気に崩した。

---(以上、引用)----

また同記事で、震災1週間後に、ITSジャパンが公開した、被災地を車が実際に通ったルートを示す「通行実績情報マップ」が紹介されています。

---(以下、引用)----

 情報を提供したのは、ホンダ、パイオニア、トヨタ自動車、日産自動車。車の位置情報を無線で吸い上げ、渋滞情報などに使う「プローブ」技術のデータだ。

 技術の精度を上げるには各社が情報を持ち寄るのが一番だが、技術開発競争が歩み寄りを阻んでいた。ところが震災で各社の担当者が情報の提供に応じ、どの道を行けば被災地にたどり着けるのか、地図上で一目瞭然となったのである。

---(以上、引用)----

記事は以下のように締めくくっています。

---(以下、引用)----

 こうした連携は有事ゆえに組織のしがらみを越えて実現できた。膨大な情報を蓄積できるクラウド基盤が広がった今こそ、平時から情報を共有する意識を育むことが、大災害を防ぐことにもなるだろう。未曽有の大震災が促した結束を忘れないでほしい。

---(以上、引用)----

記事にも書かれていますように、この数年間で急速に拡がったクラウドによる情報基盤があったからこそ、組織の壁を越えた情報共有が実現でき、大きな価値を発揮したのでしょう。

しかし、考えてみれば、組織の壁を越えた情報共有は、有事に限らなければならない理由はないかもしれません。

確かに従来のように、情報囲い込みで短期的な利益を確保したい、と考えがちです。

しかし平時でも、組織の壁を乗り越えて、クラウドを活用して情報共有することで、世の中に大きな価値を生むことも、多いはずです。

今回の震災で生まれた様々な事例は、図らずも、それを実証したように思います。

これから10年近く続く日本の再生でも、このように組織の壁を越えた情報共有により、大きな価値を生み出していければ、日本も元気になっていくのではないでしょうか?

 

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