【フリーミアム実験結果】 有料版/無償版比率=5%ではなく0.32%でした
『FREE』でクリス・アンダーソンが述べている『フリームミアム』とは、5%の有料ユーザーが、残り95%の無料ユーザーを支えているモデルです。
この5%という数字は普遍的なものなのでしょうか?
今回、『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版を無償公開し、並行してアマゾンでも紙の本を販売していましたので、数字を比較してみました。
3/16(火)23:00から3/26(金)23:00まで、10日間のDL数: 1,278件
同期間の『戦略プロフェッショナルの心得』販売数:4冊
(*)...中古品販売は含んでいません。→有料版/無償版比率 = 0.32%
という結果でした。5%ではありませんね。
「5%の有料ユーザーが、残り95%の無料ユーザーを支えている」というフリーミアム・モデルは、必ずしも普遍的なものではない、ということが、この結果からも分ります。
フリーミアム・モデルは、色々な仕組みを積み重ねて実現します。
単に無償公開版と有償公開版を用意しておくだけでは実現しない、つまり、
『タダで提供したのにあまり儲からなかった → それは創造力が足りなかっただけ』
これは考えてみたら、当り前のことですね。(実際、この10日間は、無償版だけプロモーションして、紙の有償版の方はほとんど紹介しませんでしたし)
また、3/1から3/16までの16日間で、『戦略プロフェッショナルの心得』は12冊売れていました。
その後の10日間で売れたのが4冊ということは、結果的に有償販売版とのカニバリゼーションを起こしている可能性があります。
ただ今回、PDF版無償DLがきっかけで、読んで下さった方々が1,000人もおられました。
元々は「沢山の方々に読んでいただきたい」という動機で自費出版をしたのですし、今回のPDF版無償DLはそれを拡げるために行いました。儲けるために行ったのではないので、今回の結果には、心から満足しています。
今後も、『戦略プロフェッショナルの心得』PDF版の無償公開は、有償版が売れなくても継続します。
ちなみに、ここからダウンロードできます。
さて、自費出版ではなく商業出版において、書籍を完全無償公開してビジネスとして成立させるためには、無償で入手する人達のうち何%がプレミアム版を購入するか、という比率にビジネスケースがかかってきます。
今回の試みでも分るように、「無償公開の5%がプレミアム版を購入する」という話は、必ずしも普遍的な話ではなく、色々な仕掛けを工夫することで成り立ちます。
また、先日ご紹介した岩瀬さん著『生命保険のカラクリ』は、出版社と色々と交渉した末、期間限定での公開です。
またクリス・アンダーソン著『フリー』は、日本語版が出る前に限定1万部をネットで配信しましたが、これが人気をあおりベストセラーに繋がった面も大きいと思います。
このように、商業出版においてネットで無償公開してビジネスに繋げるためには、デマンド・ジェネレーションの一環として、期間限定公開で話題性が高まるのを促し、期間終了後に実際の本の販売で投資を回収する、という手法が現実的なのかな、と思います。
他にも、特定の章だけを公開する方法もありますね。ただこの場合は、予めネットで無償公開することを前提で目次をデザインしておくべきかな、と思います。
デマンド・ジェネレーションするためにはどこの章を使い、顧客が有償でも価値を得たいと考えるのはどこの章で、その部分でいかに投資を回収するか、ということですね。
ただ、ネットで期間限定あるいはコンテンツ限定で無償公開することが差別化ポイントになるのは、電子出版がブームになっていて、かつ、実践している人達が極めて少数派である現時点だからこそ、だと思います。
今後、この手法は一般化し、どの出版社も行うべき当り前の手法になってくるかもしれません。