ジェームス・M・バーダマン 著
相場 妙 監訳
文部科学省は「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」をすすめています。個人レベルでもここ1ー2年の間に英会話等何かしらのアクションを起こした方も多いのではないでしょうか?それはそれで非常に大事なことですが、最終的には英語は意思疎通のツールでしかなく、コミュニケーションには知識や文化的理解という中身が伴っていることが必要です。英語が完璧に出来ても内容がないと会話は大きな意味を持ちませんし、エグゼクティブクラスとのビジネスランチ等ではしばしば窮地に陥ります。日本人同士でも会話が全く進まない時ありますよね、アレのもっと緊張する場面です。
この著書では日本に関するトピックを国家、政治、経済、社会、生活、原発、文化、教育、東北復興という項目に分けて英語とそれに対する日本語訳で紹介しています。
細かくみると、固いところでは「靖国神社問題」や「領土問題」、「特定秘密法案」に「日本版NSC」 etc.と一応理解はしていても、そう簡単には語れないトピックたち。一方、「富士山」や「コンビニ」、「自動販売機」のことなど分かっているつもりでも外国人に突っ込んで質問されるとしどろもどろになるトピック。また我々オッサンというカテゴリーに分類される人たちには難易度が上がるものの、つかみのトピックとしてはかなり使い勝手のいい「AKB48」や「きゃりーぱみゅぱみゅ」のことまで。。。「きゃりーぱみゅぱみゅ」の正式芸名が実は「きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ」だったとご存知でしたか!?
そんな知識を披露する場面があるかどうかは別として... 自分の体験からもこういった日本ネタは外国人の方が詳しいこともザラにありますので、何かしらの無難なコメントを返せるようになっておく必要があります。 特にエグゼクティブクラスには日本通も多く、タチの悪いことに来日時には「予習」してきていることもあります。地球上で京都が一番好きだというイギリス人上司に「東京だけでフランス全土よりミシュランの星を多く獲ったらしいね?」とか「旨味の概念は日本人が発見したんだって?」とか言われ、こっちが勉強させてもらった経験は今でも覚えています。またCEOを含めボードメンバーや世界中のディレクタークラスが集まったセールスミーティングでのプレゼンでは日本のマーケット特性から説明する必要があり、この本にある「人口高齢化」や当時の民主党政治に触れ、時にはそれらを使ってロジカルな言い訳が必要とされる場面もありました。
恐らくこの本に関しては始めから全部読むというより、そういったシチュエーションに合わせて辞書的な使い方をするのがいいのでは?と思います。文章をそのまま暗記する必要はなく、時事的なキーワードや重要な単語は太字で書いて有るのでそれを頭に入れておくと一般的な会話でもアレンジして使えるはずです。前述のようなプレゼンでは役に立つでしょうし、ビジネスランチやディナーでも即活用できるはずです。海外赴任や留学をする前にもこういった自国紹介の知識を入れておき、ある程度スラスラいうことで、デキる同僚/上司/部下etcとして第一印象もかなり変わってくるはずです。ハタチなら"I don't know.", "I don't care." で笑って済ませることが出来てもボードメンバー相手のランチで「で、いま原発の問題ってどうなってるの?」と聞かれてそう答える訳にはいかないでしょうから。逆にこういったことから本当に実践的な単語や使い方を覚えていくというのは典型的なテキストよりもよっぽど効果的なやり方かも知れません。
高野 幹生
2014/02/07 16:39:00