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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

国同士の付き合い方

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韓国の歌手が入国拒否をされた問題が話題になっている。もちろんプライバシーに関わるので、拒否の理由は明らかにできないのは理解できるし、ひょっとするとそもそも通常の感覚で納得できる理由があったのかもしれないが、どうしても独島でのパフォーマンスの実績があり、名前が通っているからそのことに目が向いてしまう。

ましてや、私の個人的な感覚によれば、韓国側の頑な態度で両国間の関係が悪化している状況だから、より気を使うべき時期でもある。そう考えると、正確な理由が分からないので何とも言えないが、4時間も止め置いた上に拒否するというのは、あまり望ましい対応ではないと言わざるを得ない。

もし、独島でのパフォーマンスが理由だとすれば、それこそ独島上陸は日本の政府の立場からすれば望ましくないものの、韓国の国民としては自国領土と信じているのだし、軍事行動を起こしたわけでもないし、日本の安全に直接関わる行為をしたわけではなく、南北対話を目指した平和的なものだとすれば、拒否は韓国側が現在頑ななだけに、大人の対応としては如何なものかと感じざるを得ない。

もちろん他の明確な理由があるのかもしれないが、だとすれば何も4時間も空港で止め置く必然性はなかっただろう。どうも、このあたりの国家観の関係に関する基本的な戦略・戦術というのがわが国には欠けているような気がしてならない。相手が動けば、それに対して子供じみた対抗意識で何か反抗する、というようなことでは、もちろんいけないし、また自国が動くことで相手はどう考えるかというような分析も重要だ。

トム・クランシーは、Jack Ryanシリーズが有名で、その作品はいくつか映画化もされているが、是非政府関係者もこれをいくつか読んで、Intelligenceの重要性を再度見直していただきたい。

ウォールストリートで経済・金融分析をしていたJackが、その後CIAの軍事分析に携わり、最後は大統領にまで上り詰める小説だが、随所に極めて精妙な分析のストーリーが出てくる。これだけでも随分わが国の世界との違いは感じられると思う。

ちょうどイスラム圏との経済協力プロジェクトを進めており、ある日本の大手商社のOBと先方各国との事業推進などについて協議をしながら推進しているのだが、必ず相手側の動きをどう読むかという話になる。彼は商社、私は金融で畑も違うし経験も違うが、このようなことがビジネスの基本だった時代が日本にだってある。

因みに、このようなケースでも、商社OBと私で全く違う読みが出てくることもある。所詮人の考え方を推測するのだから、解はいくつもある。重要なのは、その中で蓋然性の高いものにどう絞り込むか、一方で複数の解のそれぞれについてどう対策を立てておくか、そしてその全体がコスト面でも合理的な対応になるか、である

国際社会で国同士が付き合うときは、常に相手はどういう考え方で動いているのか、自分がこう動けば相手はどう感じるか、という基本的な発想が不可欠だ。これを忘れて、自分の立場だけでものを考える、自分のやりたいことだけを主張するのでは、国際社会で評価されることはない。是非こんなことも頭において欲しい。

 

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